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「女性とトイレで…は事実だが」ブラジル名SBが性的暴行容疑 ダニ・アウベスの母親から「一族の誇り」と過去に聞いた筆者の失望
posted2023/02/26 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
JMPA
バルセロナ、ブラジル代表など世界のトップ・オブ・トップのチームで長く右SBやMFとして活躍し、クラブワールドカップ(W杯)3回、欧州チャンピオンズリーグ(CL)3回、スペインリーグ6回など世界フットボール史上最多の41ものタイトルを獲得した“生ける伝説”が、人生最大のピンチに立たされている。
ダニエウ・アウベス。全盛時はSBでありながらサイドから攻撃を組み立て、ウイングのように攻め上がり、ミドルシュートまで叩き込んだ破天荒なプレーヤーだった。
カタールW杯後、性的暴行疑惑が
キャリア22年目の昨年、W杯カタール大会に39歳7カ月にして自身3度目の出場を果たした鉄人。W杯後、スペインで休暇を過ごし、バルセロナ市内の高級ナイトクラブへ行った際、スペイン人の若い女性たちと知り合った。このうちの1人から「ナイトクラブのトイレで性的暴行を受けた」と警察に訴えられた。
それでも、スペインを出国して所属クラブのプーマス(メキシコ)へ戻り、今年1月8日のリーグ戦に出場。その後、妻であるスペイン人スーパーモデル、ジョアナ・サンツさんの母親が亡くなり、その葬儀に参列するためスペインへ戻った。
1月20日、バルセロナの警察からくだんの女性からの訴えに関して任意で事情聴取を求められ、これに応じたところ、その日のうちにバルセロナ郊外の刑務所に収監された。以来、裁判所の判決を待って1カ月以上が経過している。
幼少期、貧しさから抜け出そうとフットボールに没頭
ブラジル北東部バイア州の貧しい家庭の4人兄弟の末っ子として生まれた。両親は小さな農地を借りて野菜、果物を作り、村の商店に卸して生活する小作農。子供たちも、学校から帰ると炎天下、鍬を握った。
小柄だが明るい性格で、当時人気があった英国コメディの主人公、ミスター・ビーンの物真似をしてはクラスメートを笑わせていたという。
フットボール好きだった父から手ほどきを受け、13歳のときに地元の小クラブのU-13に加わった。貧しい境遇から抜け出そうと、プロ選手を目指して練習に励んだ。「プロになるのに勉強は必要ない」と割り切って学業を放棄し、午前中はU-13の練習、午後はU-15の練習に加わり、夜は個人練習を積むというフットボール漬けの生活を送った。当時のポジションはMFだった。
14歳のとき、州都サルバドールの強豪バイアのU-15に入り、豊富な運動量を買われて右SBへコンバートされた。当時の監督は、「あれほど練習する子は、後にも先にも見たことがない。『君は絶対にプロになれる。頑張れ』といつも励ました。でも、まさかバルセロナやセレソン(ブラジル代表)で活躍するほどの名選手になるとは夢にも思わなかった」と述懐する。