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平岩優奈は24歳で…女子体操選手の“引退”はなぜ早い? 体重制限で“燃え尽きる”リスクも…指導者の意見「こういう競技なので軽やかな方が」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/24 17:15
24歳で引退を表明した体操女子日本代表の平岩優奈
過度な体重管理は、メンタル面の負荷になる
過度な体重管理は、身体のみならずメンタル面にもかかわってくる。
多くの選手は、メニューや量に制限をかけて食生活をおくっている。指導方針次第では、体重コントロールで相当のプレッシャーをかけられたりする。メンタル面に負荷がかかって当然ともいえる状況が生まれる。そうした高密度の負荷の中で過ごせば、いわゆる「燃え尽きる」リミットが短くなる選手がいても不思議はない。体操の競技としての特性とあいまって、競技寿命が短いゆえんである。
メンタル面の消耗の度合いも考慮した長く継続していけるトレーニングのあり方はこれからも課題として取り組むべきテーマだし、単純に体重や体脂肪の数値を見るのではなくその中身まで把握して取り組もうとしているチームもある。また食事のコントロールにおいて、曜日を決めて好きなものを食べてよい日を設ける試みも、ささやかでも改革への意思の表れだろう。
そうした問題があることを考えていくと、自分なりの方向性を歩み24歳で五輪メダルを獲得した村上、オリンピックに2度出場するなど26歳まで競技を続けた寺本明日香という存在の重みも増してくる。
大きな転換期を迎える体操女子の現在地
いずれにせよ、東京五輪団体の選手たちは代表を退いた。
それでも経験者がいない不安を吹き飛ばすように、昨秋の世界選手権には宮田笙子、深沢こころ、山田千遥、坂口彩夏、渡部葉月と、世界選手権初出場の5名で参加し、実力を踏まえチームとして掲げていた「決勝進出」という目標をクリアし7位入賞を果たした。キャプテンを務めた深沢は世界選手権という舞台に「いい経験ができました」と笑顔で語っている。また「このメンバーだったから」と語る選手もいたという。
全員が未経験という同等の立場であることを、かえって強みにすることもできる。男子と異なり、大きな変化を迎えた女子の選手たちは歴史を受け継ぎ、築こうと進んでいくだろう。
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