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問題児FWが“首位争い中にサンバ帰国”、ネイマールも怒られた…ブラジル人の「カーニバル愛」がフットボール級にアツすぎなワケ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byNaoya Sanuki/Takuya Sugiyama
posted2023/02/21 17:03
エジムンドとネイマール。ブラジルが誇るフットボーラーだが、カーニバルをめぐって騒動を起こしたことがある
フィオレンティーナのサポーターは、今でも「エジムンドがカーニバルに帰国しなければ、間違いなく優勝していた」と悔しがっているという。
ネイマールも帰国して批判を浴びたことが
ネイマールも「カーニバル帰国」が原因で強い批判を浴びた。
2019年1月下旬、フランス杯の試合で右足小指を骨折。所属クラブ(パリ・サンジェルマン)の了承を得て2月21日にブラジルへ帰国し、一週間後、松葉杖が取れた。しかし、まだリハビリ中の身でありながら、3月初めにサルバドールとリオのカーニバルをはしご。観客席ではあるが2日にわたって深夜から未明まで踊った。「プロ意識が欠如している」という批判がある一方で、「いや、カーニバルで踊ることで足の故障のリハビリをしたんだろう」という強烈な皮肉も聞かれた。
他にも、2002年W杯で優勝した右SBカフー、GKマルコス、2000年代前半に浦和レッズなどで活躍したFWエメルソンら多くのブラジル人選手、元選手がカーニバルのパレードに出場している。
カーニバルが好きなのはブラジル人だけではない。アルゼンチンの英雄マラドーナも現役を引退した翌年の1998年、リオのカーニバルを体験し、「世界で最も魅力的なショーじゃないかな」と感嘆した。ビールを飲み、太い葉巻をくゆらせ、サンバのステップを踏んで全身で楽しんだ。
なんでこんなにカーニバル好きか…2つの理由
どうしてブラジル人選手はこれほどカーニバルが好きなのか――。その第一の理由は、他のブラジル人と同様、体の中にサンバのリズムが流れているからだろう。
また、ブラジル人ダンサーがサンバを踊るときのしなやかな上半身の動きは、ブラジル人選手がドリブルをする際にマーカーを幻惑しようと上半身を揺する動き(ジンガと呼ばれる)とよく似ている。ブラジル人にとってサンバを踊ることとドリブルをすることは身体運動として共通する点があり、それゆえカーニバルにも愛着があるのではないか。
実は、ブラジル人の誰もがカーニバルに熱狂するわけではない。中流以上の階層にはカーニバルにもサンバにもほとんど興味がなく、カーニバル休みを利用して国内外へ旅行に出かける人もいる。
しかし、フットボーラーの大半は中流以下の階層の出身者であり、庶民だ。幼い頃から、家族と共にカーニバルに親しんできた。それゆえ、選手として成功して経済的に豊かになっても、決して無関心ではいられないのだろう。
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