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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ダルビッシュ36歳「気負わず」に重み…大谷翔平、山本由伸や佐々木朗希ら超充実だからこそ願う「圧倒的エースを作らない」投手運用
posted2023/02/17 17:08
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
第5回のWBCは、各国の選手発表が出そろった。当初は「史上最強の顔ぶれ」との報道が先行した。確かに豪華な顔ぶれだが、各チームともに、MLB球団から出場認可が下りない選手も散見され、フルメンバーの激突とまでは言えないようだ。
栗山英樹監督以下、コーチ、選手の目標は「世界一奪還」ではある。2009年の第2回大会までは連覇したが、以後2大会はベスト4に終わっている。2019年のプレミア12や2021年の東京オリンピックでは日本が優勝したが、MLBはWBC以外の大会では、現役選手の派遣を認めていない。要するに現時点での侍ジャパンは「MLB選手が参加しなければ世界一」ということになるだろう。
その評価を覆すためにも、強い意気込みで挑んでいるのは間違いない。
その意気込みに水を差すようで恐縮ではあるが――栗山英樹監督にとって、重要な目標の1つには「全員無事で原隊に復帰する」があると思う。
日本人選手は日の丸のユニフォームを着ると、自ずと高いモチベーションになる。それは当然良いことだ。日本人選手の多くは「一戦必勝」の甲子園大会を戦ってきた記憶がある。その時代に戻ってプレッシャーを感じつつも奮起するのだろうが、頑張りすぎるといろいろなリスクが出てくるのも事実である。
09年WBCまでと、それ以降の松坂の成績を比べると
その象徴的な例が松坂大輔だった。
彼は2006年、2009年と2回のWBCで日本優勝の立役者になり、2回連続でMVPに輝いている。野球人生において98年夏の甲子園とともにハイライトと言えるだろう。しかし松坂は、2009年シーズン開幕前のWBCで大活躍したのを最後に所属チームでの成績を落としている。数字で見ると以下のようになる。Kは9イニング当たりの奪三振数。
<1999年~2008年>
NPB 8年204試108勝60敗1402.2回 率2.95 K8.69
MLB 2年61試33勝15敗372.1回 率3.72 K8.58
<2009年~2021年>
MLB 6年97試23勝28敗418回 率5.10 K7.86
NPB 7年15試6勝5敗61.2回 率5.11 K8.03
第2回WBCを分岐点として完投は一度もなく、また規定投球回数にも日米で一度も達していない。
1998年夏の甲子園、決勝戦でノーヒットノーランを演じて、一躍ヒーローとなった松坂大輔は、入団年の春季キャンプでは球団職員が「影武者」になって、松坂をファンから逃れさせるほどの大フィーバーになった。期待にたがわず、松坂は入団から3年連続最多勝、奪三振王4回、防御率1位2回、新人王、沢村賞1回、イチローとの名勝負を演じるなど、NPBを代表する投手になった。