酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「強豪校女子マネの実態」「二塁走者の最適リードは?」高校生の野球研究が東大、社会人並みにスゴい…生徒、元プロの先生に話を聞いた
posted2023/02/05 11:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
昨年12月17日、18日に「日本野球科学研究会第9回大会」が近畿大学で開催された。全国の野球指導者・研究者などが集い「野球」に関する研究成果を発表し、問題意識を共有する大会だ。2日間で340人もの野球関係者が集まる盛会だった。
野球科学研究会ではメインホールで行われるシンポジウムや講演などとともに「一般研究発表(ポスター発表)」も行われる。
これは学校や企業の研究者が「1テーマ」に絞り込んだ研究を縦180cm、横90cmのスペースに収まる1枚のポスターにして発表するというもの。今回のポスター発表は91件に上った。
5校が9件ものポスター発表をしている
最近は、このポスター発表に参加する高校生が目立っている。数年前は紙本庸由監督が指導する鳥取県立米子東高校だけだったのが、2022年は5校が9件のポスター発表をした。この中のいくつかの発表者に話を聞いた。
〈鳥取県立米子東高校:紙本庸由、後藤和志、八幡大成、豊岡竜大、三島優雅〉
「サウナによるコンディショニングは短期的な疲労回復効果があるのか」
・後藤和志君
うちの投手がひじの故障をしたときに、サウナが疲労回復の手段として有効ではないかと提案がありました。そこで4種目のトレーニングを実施して、その後サウナによるコンディショニングをしたグループと、しなかったグループに分けて数値を計測しました。
その結果、スクワットだけは有意な差が見られましたが、他は差がありませんでした。ただその後のアンケートではサウナに入った被験者の多くに「体が軽かった」「気分が良かった」などの意見が見られたので、メンタル面での活用もあるのかなと思いました。
アウト数による得点期待値、ピンチでの守備隊形は…
〈鳥取県立米子東高校:紙本庸由、木下啓吾、小澤乃亜、玉岡蓮、網谷天花〉
「0アウトランナー無しの得点確率及び得点期待値と選手の認識の差についての一考」
・木下啓吾君
先頭打者の重要性を再確認するために調査を行いました。鳥取県大会5年分283試合のデータを調べ、「0アウトランナー無し」の得点期待値及び得点確率は「1アウト一塁、2アウト三塁二塁、2アウト三塁」よりも高いことがわかりました。でも、うちの硬式野球部員16名のアンケートでは「0アウトランナー無しを重要視する」という人は全体の12.5%しかいませんでした。
実際の数値と選手の認識には差があって、ここを改めることを目的にしたいと思います。