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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「親不孝な終わり方をしてしまった」駒澤大・大八木弘明監督に謝りたい…優勝後に休部、花崎悠紀が明かす“2年後の真実”「一番学んだのは…」
posted2023/01/28 11:03
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
JIJI PRESS
「親不孝な終わり方をしてしまったと思います」
“第2の父”として慕う大八木弘明監督に対しては、申し訳ない気持ちがある。2021年、3年時に箱根駅伝の6区で区間賞を獲得した駒澤大陸上競技部OBの花崎悠紀は最終学年を迎えると、走ることができなくなったのだ。『平成の常勝軍団』と呼ばれた名門にとっては7度目の総合優勝だったが、13年ぶりのこと。花崎を含めて、選手たちは誰も経験していなかった。あらためて振り返っても、いろいろな思いが交錯する。
誰かのためには走れても、自分のためには走れなかった
「うまく説明するのは難しいです。自分をかばってしまう部分もあるので。正直、故障ではなく、精神的に苦しくなりました。僕自身、これまで1位を取ったことがなく、トップの座を守る重圧を初めて感じたんです。当時は優勝に向けて努力していましたが、まさか自分が箱根王者の一員になるなんて、思いもしなかった。3年時は4年生のために頑張っていたところもありました。昔から誰かのためには走れても、自分のためには走れなかった。だから、僕は真のトップアスリートになれないんでしょうね。“箱根の6区止まり”の選手。何のために走ればいいのか、分からなくなりました」
大八木監督は花崎たちの学年からキャプテンを選ばず、絶対的なエースとして君臨する3年生の田澤廉を抜擢。総合優勝を決めた夜には本人に伝えていた。新チームが動き始めると、実力主義の傾向はより強まったという。タイムを出せない選手、故障に苦しみ続ける者たちの肩身が狭くなっていくのも目の当たりにした。ストイックに強さを求める強化方針に対し、これまでとのギャップを感じることも増えていった。
不眠症に悩まされる日々が続き、夏には…
「僕は上級生たちに手を差し伸べられ、底辺からはい上がってきた選手だったので、新チームとの温度差はありましたね。結果を求めるスポーツの世界ですから、仕方ない部分もあるんですけど……」