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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
駒澤大・大八木弘明監督に「それならやってやるよ!」と反抗…2年前箱根で区間賞、“怒られすぎた男”が“第2の父親”をそれでも嫌いになれないワケ
posted2023/01/28 11:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
今年1月、駒澤大の陸上競技部OBとして、初めて外からじっくりと見た箱根駅伝。2年前、6区で区間賞を獲得し、13年ぶりの総合優勝に貢献した花崎悠紀(当時3年)は、同区間で颯爽と山を駆け下りていく伊藤蒼唯の走りに感嘆した。
「今大会の優勝メンバーの中で唯一、区間賞を取った、あの1年生はすごいですね。細くてひょうひょうとして、かっこよかった。跳ぶように坂を下っていましたから。僕は『転がっている』とか、みんなにネタにされていました(笑)」
大八木監督が叫んだ「花崎の記録まで行くぞ」
そして、コースが平坦気味となる残り約3km。箱根湯本駅付近から運営管理車(監督車)が合流し、大八木弘明監督の声掛けが始まったときだ。『男だったら、行けよ』と鼓舞され、最後の力を振り絞る伊藤の姿を見ていると、耳を疑うような言葉が聞こえてきた。
『花崎の記録まで行くぞ』
思わず頬が緩み、昔の記憶が一気に甦った。
「ここで、僕の名前を出してくれるんだって。うれしくなりました。僕は3年時に初めて箱根に出走し、それっきりでしたから。もしかすると、寮に帰って『花崎みたいに1回切りになるんじゃないぞ』と言っていたかもしれませんが、反面教師のような存在でもいいんです。大八木監督に覚えてもらっていれば、それでいい」
“親”って嫌いにならないですよね
しみじみと話す言葉には、恩師への特別な思いがにじむ。誰よりも叱られ過ぎた花崎にとっては、監督以上の存在なのだ。