「少年のように目を輝かせて、選手と向き合っていたんですよ。僕らのときもそうだったなって。あの瞬間、『もう昔のことなんて、どうでもいいや』と思えました。それどころか、応援したくなりました。あまりに多くの教えを受けましたからね。僕自身、嫌なこともありましたが、それ以上のものを与えてもらいましたので」

出雲駅伝、体調不良ながら3区を区間2位で走りきった田澤と抱擁を交わす大八木監督　©Nanae Suzuki

全日本大学駅伝で3連覇を果たし、喜色満面の大八木監督　©Nanae Suzuki

大八木監督のもとで、”当たり前の基準”を培われた

　いまとなっては、恩師に感謝することばかり。富山で初めてアルバイトを経験し、気づいたこともある。駒澤の常識は、仕事場では当たり前ではなかった。上から指示されたことを全力でこなすのは当然。そこからプラスアルファで考えて練習に精を出し、初めて評価される。

「それが社会でも普通だと思っていました。仕事も『1から10』をこなし、それ以上するのが普通だろと。それなのに『1から8』までしか作業しない人たちまでいるんですね。大八木監督のもとで、“当たり前の基準”を培われたと思います」

一番学んだことはカッコよく言えば、生き様。

　就職活動でも駒澤大の陸上競技部で、限界まで追い込んで練習をこなしてきた経験が生きた。大学の4年目こそ苦しんだが、花崎にはそれまで試練を乗り越えてきた自負があった。どの業界であっても堂々と面接に臨むことができ、受けた会社5社からはすべて内定通知をもらった。今春からは地元富山の一般企業で会社員として働く予定になっている。

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