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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
駒澤大・大八木弘明監督に「それならやってやるよ!」と反抗…2年前箱根で区間賞、“怒られすぎた男”が“第2の父親”をそれでも嫌いになれないワケ
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/28 11:02
今年の駒澤大と同じく、2021年箱根駅伝優勝時にも6区は区間賞。その走りを見せたのが花崎悠紀(当時3年)だった。本人に話を聞くと…
「お前を使う。ちゃんとやれよ。体重を落とさんと、使わんぞ」
陸上部が定めた身長165cmの基準値は57kg。前後1kgは誤差で許されていたが、ガッチリ体型の花崎はプラス2.5kgだったという。それでも、6区の座を争うメンバーをしのぐ好タイムを叩き出していた。箱根の前日ミーティングでは「お前は区間3位ぐらいでいい」と言われ、設定されたタイムは58分45秒。30秒まで縮められれば、上出来と思われていた。
大きな声で叫ぶので、何を言っているかほとんど分からず…
いざ復路のレース当日、往路1位の創価大を追いかけ3番目に芦ノ湖から飛び出すと、あっという間に2位の東洋大をかわし、快調にラップを刻んでいった。ハイペースで坂を駆け下りながらも、自分ではタイムをよく把握していなかった。驚いたのは、箱根町役場の待機所にいた大八木監督である。青山尚大主務から「58分を切るタイムで来ています」と報告を受けると、「お前、それは嘘だろ」と聞き返したほどだ。ラスト3kmから運営管理車で花崎の後ろについてからは大興奮だった。
「大八木監督がすごいテンションだったので、自分はいいペースで来ているんだなと思いました。指示がはっきり聞こえたのは、『1分20秒』(1位とのタイム差)くらい。あとはかすかに『57分台』という言葉が耳に入り、自分でも『マジかよ』という感じでした。マイクを使って大きな声で叫ぶので、何を言っているかほとんど分からなかったのですが、熱量はしっかりと伝わってきました。僕も力が湧いてきて、最後は笑顔になりました」
大八木監督は“谷間の世代”花崎ら3年生を抱きしめた
タイムは設定よりも1分以上速かった。区間新に迫る57分36秒は、いまも6区の駒澤大記録として残っている。逆転優勝に向けて、勢いをもたらす価値ある区間賞となった。
「あとから聞いた話ですが、誰も僕に期待していなかったみたいですね(笑)」