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「僕の名前はラーズ・ヌートバー。日本人です」ヌートバー10歳、突然の“予言”…母クミさんが語る“WBC代表選出の15年前”「あれは本気だったのか」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byKumi Enokida Nootbaar
posted2023/01/18 11:04
WBC日本代表に選出されたラーズ・ヌートバー。母・クミさんに聞く“100%好きになる”ラーズの人柄とは?
クミ そうだ、今思い出したんですけど、ラーズと友人が話してる内容が聞こえてきたんですよ、小学生の時かな。その子が「クミは日本人だからラーズも日本語喋れるでしょ」って言ったら、「うん、わかるよ」ってドヤ顔。何を言ってんの、話せないじゃんと思ったら、「うんち」「おしっこ」みたいな単語を教えてて(笑)。そしたら、その友だちも単語の意味まではわからないので「本当だ! ラーズは基本的な日本語は話せるんだね」みたいな意味のわからない会話をしていました。そういったお調子者な性格は今も変わらない。
――愛らしいエピソードです。今は日本語を話せるんですか。
クミ 実際のところ話せないんですよね。長男はプリスクールに入るまで日本語メインだったんですけど、学校がはじまるとどうしても英語がメインになって、自ずと子どもたちの間でも英語に……。ただ子育て中、私が怒るときに「何やってんの!」とか日本語が出ちゃっていたので、そういう言葉はわかるかもしれません。今も私が何かミスすると逆に「ママ、何やってんの!」って言われますし。
「あのラーズくんが…」「覚えてる!」
――ちなみにホストファミリーとして受け入れた船橋さん、塩澤さんとは今も交流を?
クミ もちろん。毎年クリスマスカードを交換してましたし、メールでのやりとりも。ただ昨年はクリスマスの知らせどころじゃなかった。船橋くんから「あのラーズくんが。すごいことになりそうですね」「クールな斎藤(佑樹)がすんごい興奮してるんですよ」って連絡が来たんです。そのときはまだ日本代表入りが正式に決まっていない時期だったので、私も「らしいね~」みたいな感じで特に何も言わなかったんですが。
しかも、あの高校代表のみんなに船橋くんがLINEで「あのラーズが日本代表になるかもしれないよ」と言ったら、みんな「覚えてる、覚えてる!」って言ってくれていたそうで。格別に嬉しかった。だから本当に不思議なんです。あのとき高校日本代表選手と交流したこと、10歳だったラーズが「僕は日本人です」と自己紹介したこと。それら全部がつながっていたのかもしれないと思うと……。〈つづく〉
ラーズ・テイラー=タツジ・ヌートバー/セントルイス・カージナルス所属、25歳、右投げ左打ち、191cm・95kg。1997年9月8日生まれ、米カリフォルニア州出身。2018年、南カリフォルニア大からドラフト8巡目でカージナルスに入団。21年にメジャーデビューを果たした。ミドルネームの“タツジ”は母方の祖父の名前「達治」から。
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