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ドーピング問題から1年 ワリエワ16歳が騒動をモチーフにした衝撃プログラムで見せた決意とは「過失なし」裁定に再び紛糾
text by
栗田智Satoshi Kurita
photograph bySputnik/KYODO
posted2023/01/15 11:02
ワリエワの今季のフリーでは、自身のドーピング騒動を想起させる振り付けがある
迎えた12月23、24日のロシア選手権は、まさに1年前、ドーピング問題が起こった大会である。ジャンプの失敗でショートプログラム4位と出遅れたのが響き、フリーは4回転トウループを2度成功させほぼノーミスながら逆転はならず銀メダルに終わった。しかし、それでも表情はすっきりとしたものだった。
「フードはもういらないと考えました」
そして、ここでの一番の変化は、演技の最後に布で顔を覆うこと自体をやめたことだ。記者会見でそのことを訊ねられたワリエワはこう答えた。
「フードはもういらないと考えました。1年前のように顔を隠す必要はありません。これはおそらく良い変化です」
エキシビションではNetflixの人気ドラマシリーズ「ウェンズデー」をモチーフにしたナンバーを披露し、そのキレッキレのダンスがまた話題となった。と同時に、ドーピング問題にからめて批判する声もまた湧き上がるのだった。
とくに表現力など、現時点で世界最高レベルの才能を持つ選手の一人であるだけに、それを素直に喜べない今の状況は残念でならない。彼女の中の前向きな心情の変化は喜ぶべきだが、問題が終わったわけでは全くないのだ。
1月13日、RUSADAはワリエワ本人に過失はないとの判断を下した。検体を採取した2021年のロシア選手権は失格とし、資格停止の処分は科さないとのことだが、これで手打ちとはまずならないだろう。やはり調査内容の公表と相応の処罰、一刻も早い解決が待たれる。
そうでなければ今後、彼女がどんなにすばらしい演技を披露しようとも、賛辞と同時に非難も浴びることになってしまう。今季フリーでの使用曲「トゥルーマン・ショー」のエンディングのように舞台から退場でもしない限り、ドーピングの文字は一生彼女につきまとっていくかもしれない。
重荷を背負いながら、彼女はどこまで跳ぶことができるだろうか。
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