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パッキャオ招聘だけでなく『BreakingDown』勢の参戦も? 地上波なしのRIZINは「PRIDEの悲劇」を乗り越えられるのか
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/01/08 17:00
2022年の大晦日に行われたRIZINとBellatorの5対5全面対抗戦のオープニング。PRIDEにオマージュを捧げた演出がファンの心を打った
「PRIDEの悲劇」を繰り返さないために
大晦日の『RIZIN.40』でもっとも印象に残ったのは、Bellatorとの対抗戦に敗れた選手たちの表情だった。ガジ・ラバダノフの右ストレートで意識が遠のく場面もあった武田光司は「肉体的にも精神的にもガタがきている」と明かし、「少し休みます」と口にした。フアン・アーチュレッタと判定1-2の激闘を繰り広げたキム・スーチョルは、ファンに向けて「恥ずかしい。申し訳ない」と謝罪の言葉を繰り返した。
また、堀口恭司の強烈なカーフキックで左足を破壊された扇久保博正は松葉杖をついてインタビュースペースを訪れ、悔しさを押し殺しながら完敗を認めた。パトリシオ・ピットブルとの“王者対決”に敗れて何度も「寂しい」と漏らしたクレベル・コイケの左目の上には、痛々しい縫い傷があった。そして大将戦でAJ・マッキーに敗れたホベルト・サトシ・ソウザは、顔に氷嚢をあてながらボンサイ柔術の盟友の質疑応答を見守り、0時を回って年が明けたあとも律儀にインタビューの順番を待ち続けていた。
言うまでもなく、選手たちがリスクを背負ってリングやケージに上がらなければ、格闘技イベントは成立しない。RIZINがこの先も日本の格闘技界を牽引していくためには、なによりもまず彼らや彼女たちにとって魅力的な舞台であり続けなければならない。世界中のトップファイターが集結し、テーマ曲を聞くだけで心が震えるほどファンを熱狂させたPRIDEがあっけなく消滅してしまったことを思えば、現在の状況は決して楽観視できるものではないだろう。
那須川天心はもういない。地上波での放送予定も(現時点では)ない。2022年にひとつのピークを迎えてしまったことで、格闘技界全体が難しい舵取りを迫られている印象もある。それでも、あの歴史を繰り返さないために。RIZINの真価が問われる2023年が幕を開けた。
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