「ハードコアな（格闘技）路線だけでなく、守備範囲は広く持っておきたい。エンターテイメント色というのも、昨今難しいですよね。アマチュアの選手たちによるいろんな大会が生まれていて、そういうものが世間にウケて、バズったりしている。プロのレベルではない選手たちが重用され、興味を持たれる時代でもある。いずれにしても『こうあるべき』というのをRIZINとしてあまり決めずに、いろんなものに順応していけるように、世の中の動きをしっかり見ていきたい。今回の大晦日の路線がずっと続くわけでもない」

　話に出た「アマチュアの選手たちによる大会」とは、朝倉兄弟がスペシャルアドバイザーを務める『BreakingDown』を指している。平本蓮に「素人の喧嘩」と批判されるなど、毀誉褒貶が相半ばするイベントではあるものの、一部の選手はいまやプロ格闘家をしのぐほどの知名度を獲得している。実際、『RIZIN.40』への参戦が噂された選手もいただけに、榊原CEOも今後の連携の可能性を否定しなかった。

「もちろん『BreakingDown』の1分で戦っているトップ選手たちがRIZINのルールに適応できるのか、というのはあります。だからといって、『BreakingDown』を否定するつもりもない。RIZINの5分3ラウンドのレベルの高い戦いのなかでも、十分対抗していけるような選手が出てきたら、それはそれですごく魅力的だなと思います」

『RIZIN.40』を終えて記者たちの質問に答える榊原信行CEO　©Number Web

パッキャオ招聘の意図とは？

　榊原CEOが予告していた通り、大晦日にはいくつかのサプライズが用意されていた。なかでも、マニー・パッキャオの参戦発表がバジェットの規模において最大だったのは間違いない。対戦相手は未定とのことだが、フロイド・メイウェザー・ジュニアに続いてボクシング界のレジェンドを招聘した背景には、巨費を投じてでも「守備範囲は広く持っておきたい」という意図があったのだろう。

　大晦日が満足度の高いイベントだった一方で、日本の格闘技界の先行きは不透明だ。振り返ってみれば、2022年はあまりにも特別な一年だった。6月の那須川天心vs.武尊は社会現象級のインパクトをもたらし、9月のメイウェザーvs.朝倉未来もエキシビションながら大きな注目を集めた。

　だからこそ、2023年が“苦難の年”になる可能性は否定できない。コア層からライト層まで誰もが見たいと思えるようなビッグマッチは、そう簡単に再現できるものではないからだ。那須川は武尊戦を最後にボクシングに転向、朝倉未来も遠くない将来に引退することを明言している。

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