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パッキャオ招聘だけでなく『BreakingDown』勢の参戦も? 地上波なしのRIZINは「PRIDEの悲劇」を乗り越えられるのか
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/01/08 17:00
2022年の大晦日に行われたRIZINとBellatorの5対5全面対抗戦のオープニング。PRIDEにオマージュを捧げた演出がファンの心を打った
2006年、フジテレビがDSEとの契約を解除したことをきっかけにPRIDEは崩壊の一途をたどり、翌2007年に消滅した。歴史をなぞるかのように、フジテレビは『THE MATCH 2022』の生放送予定を取り下げ、その後のRIZINの放送からも撤退した。もちろん、2000年代と現在ではPPVの視聴環境や、テレビのプレゼンスは大きく異なる。ボクシングを含めて「格闘技はPPVで見る時代」という認識が広がってきているのも事実だろう。とはいえ、テレビ放送をきっかけに格闘技に興味を持つ層が生まれにくい現状は、選手にとっても関係者にとっても好ましいものではないはずだ。
「全部がエンターテイメント」平本蓮の持論
そういった状況を踏まえれば、パッキャオ招聘も『BreakingDown』との交流の可能性に触れたことも、RIZINの生存(成長)戦略として理解できる。同時に、春ごろの興行の目玉として斎藤裕vs.平本蓮、牛久絢太郎vs.朝倉未来という「競技としてのレベルが担保され、かつ客が呼べるカード」を発表できたことも大きい。王者クレベル・コイケへの挑戦権をかけたフェザー級の戦いが、2023年のRIZINのひとつの軸になっていくと予想される。
大晦日、ボクシングに準じた特別ルールで梅野源治と拳を交えた平本に「今日のような“エンタメファイト”と、MMAファイターとしての“ガチ路線”の両立」について質問したところ、いみじくもこんな言葉が返ってきた。
「両立とか、片方だけ本気でやるとかじゃなくて、やるべき立場の人間がやるべきこと。そこで自分が必要とされてるんだな、と。普通の格闘技の試合もそうっすけど、全部をエンターテイメントとして考えたときに、面白くなかったら意味がない。全部が本気です」
この発言をプロモーター目線に置き換えるなら、飛び道具的なカードで新たなファン層の開拓に力を注ぎつつ、同時に格闘技好きが唸るような強者同士のカードを組んでいく、といったところだろうか。むろん、どちらも本気で、だ。UFCやBellatorとは異なり、階級ごとのランキング制度を導入していないRIZINにはフレキシブルな動きが可能なだけに、より魅力的かつ納得感のあるマッチメイクが求められる。