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パッキャオ招聘だけでなく『BreakingDown』勢の参戦も? 地上波なしのRIZINは「PRIDEの悲劇」を乗り越えられるのか
posted2023/01/08 17:00
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「おお、PRIDEのテーマじゃん……!」
その瞬間、さいたまスーパーアリーナのプレスルームがざわついた。大晦日の『RIZIN.40』で行われたRIZINとBellatorによる5対5全面対抗戦。佐藤大輔氏が手がけた演出は、“PRIDE色”を鮮明に押し出したものだった。
オープニング映像ではレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの『Guerrilla Radio』に乗せて2007年のPRIDE消滅からの15年間を振り返り、選手入場時にはPRIDEのテーマ曲を使用。個々の“煽りV”にもPRIDEへのオマージュがちりばめられていた。当時の格闘技熱を知る世代は、そのひとつひとつに感慨を覚えていたに違いない。
榊原CEO「今回の路線がずっと続くわけではない」
この日の入場者数は2万3661人。6月の『THE MATCH 2022』や9月の『超RIZIN』に続いて地上波での生放送はなく、現地組以外のファンはPPVを購入して視聴することになった。
PRIDE色の強い演出は、「お金を払ってでも見たい」という熱を持ったファンのエモーションをかき立てる意味において最適解だったのかもしれない。その一方で、Bellatorとの対抗戦という座組も含め、一昨年までメインのターゲットにしていたであろうライト層への訴求は、なかば諦めざるを得なかったのではないかと推測される。
過去の大晦日興行でフジテレビとタッグを組んできたRIZINサイドは、この変化をどう受け止めていたのか。大会後、榊原信行CEOは「もし地上波があれば、怪我をしている朝倉海や朝倉未来の背中を押して、出てもらうことになったかもしれない。選手たちに無理をしてもらって、格闘技ファンに『なんだよ』と言われながらも、地上波の枠が必要とするコンテンツに振る部分はあったんだろうな、と思います」と語った。
対抗戦は5連敗に終わったが、Bellatorのトップファイターを招聘したことによって、結果的にRIZIN史上もっともハイレベルといっていい熱戦が繰り広げられた。いわゆる“エンタメファイト”的な成分よりも、“競技としてのMMA”を強く志向していたように見受けられた点について質問すると、榊原CEOはこう答えている。