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高校野球の名将「“野球の上手い子が逆上がりできない”ってよくあるの、知ってます?」甲子園優勝監督が岡山で“単身赴任”…驚きの毎日
posted2022/12/31 17:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
門馬監督、とても元気そうにしておられました。
秋の熊野(三重県)に強豪高校チームが集まり、迎え撃つ地元チームも交えて練習試合を行なう。恒例の催しが、今年も紀伊半島の熊野市を中心に、2日間にわたって開催された。
今年の参加校は、北から、弘前東高、鶴岡東高、健大高崎高、昌平高、関東一高、敦賀気比高、岐阜城北高、京都国際高、大府高、創志学園高……そして地元からは、津田学園高、近大新宮高、近大高専、昴学園高、尾鷲高の合計15校。
地元の人の言うところの「向かいはハワイ」……熊野灘の雄大な水平線を前に、背後には、紅葉盛りの熊野の山々がそびえる。
単身赴任で岡山へ「ビックリだらけですね」
そんな大自然の中の5つの球場で行われた今年の「熊野」。そんな試合会場の1つ、「熊野スカイパーク球場」に岡山・創志学園高を率いてやって来た門馬敬治監督(53歳)を見つけた。
1999年から22年にわたる東海大相模高野球部監督を辞して、門馬監督が創志学園高の指導を始めたのが、新チームになった今年の8月。
およそ1年間のブランクを経て、再び、高校野球の現場に復帰されたわけだが、選手たちへの鋭いアプローチは変わらない。
「田中(仮名)、どうして右手を離して打つの?」
一方通行の指示ではなく、その理由を求める。
「元気そうに見えます? あはは、そうですか、おかげさまで元気にしてます」
真っ黒に焼けた笑顔とまなざしに力があったから、安心した。
新しい所で、いろいろビックリしたこともあったでしょ?
「ありましたよ、あれも、これも、ビックリだらけですね」
単身赴任で岡山に移り住んで、食事も家事も、全部自分でこなさねばならない日常。
「練習から戻って21時過ぎですから。それから自炊っていっても、できませんよね、実際は。そのへんでお惣菜買ってきて……」
「食べ残しの多さに驚いた」
創志学園グラウンドから岡山の中心部に戻るのに、車で小一時間。グラウンドのすぐ裏にお宅のあった「相模時代」とは、「職・住」からもう違う。
選手寮も清掃から改善した。