「いまも仕事は周りのレベルが高すぎてなかなかできません。ただ、優しく教えてくれますし、おもしろい……とは違いますが、時間の経つのが早く感じるくらいにはなっています（笑）。いろいろ周りを見るようになって、やっぱり野球をやらせてもらっていることへの感謝とか、そういうこともわかるようになりました」

　象徴的なのは、スタンドを埋め尽くす応援団の存在だ。

「あれだけ多くの仲間が応援に来てくれて、それを見るとヘタに負けられないなと思いますよ。これだけのことをしてくれて、お金もかけてくれて、その中で1回戦負けなんて通用せんな、と。うれしいですよ。でも、うれしいけど逆に結果を出さなあかん。みんなに喜んでもらいたいし、自分らも勝ちたいし、そういう気持ちになりました」

「野球だけやって仕事をサボるなんてできない」

　高校時代もアルプススタンドに応援団が駆けつける。プロ野球の試合を見ても、スタンドはファンで満員だ。だが、彼らと社会人野球の応援団は、性質が違う。西山さんは、「きれいな言い方をすれば家族」と言う。

広島市内のJR西日本野球部専用グラウンド。選手たちは午前中は社業にいそしみ、午後になるとここで練習を行う　©Masashi Soiri

「京セラドームとか、すごいたくさん入ってくれて。だから、勝ちたいし、野球だけやって仕事をサボるなんてこともできない。ヘタにサボれんすよ。見られていますから、野球部は。早く仕事を終えて練習に行かせてもらって、土日は試合をさせてもらって、みんなと同じ行動をしていないんで。最近になって、社会人野球ってこういうことなのかな、と。社員さんと一緒にというか」

　キャプテンになってチームを支えてきた西山さん。愛されて応援してもらうためにはどうすればいいのか、チームでミーティングも行ってきた。さらに若い選手たちに対して意識面でのアドバイスをすることもある。

「野球ができるのが当たり前だと思っていますからね。でも、僕みたいにならないでもっと早くに気がついてほしい。そうすれば良い方向に向かっていきますから。小中高とずっとキャプテンをやってきましたが、社会人のキャプテンはまったく違いますよ。プロを目指している選手もいるし、ここで長くやっていこうという人もいる。普段の職場もバラバラ。その中で、チームの目標を決めて、ひとつになっていけばいいかなと考えながらやっています」

7年前の戦力外通告「JR西が強いかどうかも知らなかった」

　まさに“社会人野球”を体現しているような西山キャプテン。それに対して、“プロ野球”の世界を経験してからJR西日本野球部に入部した選手もいる。2010年ドラフト2位で横浜DeNAベイスターズに入団し活躍、通算5勝を挙げた加賀美希昇さん。2015年秋に戦力外通告を受け、トライアウトを経てJR西日本に入社した。

横浜DeNA時代の加賀美希昇さん。2010年ドラフト2位でDeNA入り、通算5勝。2015年秋に戦力外通告を受け、JR西日本に入社　©JIJI PRESS

「当時の総監督に声をかけてもらって。できればプロで続けたかったんですが、それ以上にまだ野球をしていたいという思いがありましたし、話を聞く中で魅力を感じたんですよね。やっぱりそれは……仕事が安定しているというところで……。やめる選択肢もありましたが、まだできる場所があるなら続けよう、と」

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