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「じゃあ、5年後はプレミアリーグだね」冨安健洋が“Jリーグ復帰”を目指す同級生にかけた言葉とは?「目標はメッシではなく、ずっとタケ」
posted2022/12/23 11:02
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
「本当にまだまだなんだと思います。まだ先のことを見る感情にはなれないですし、難しいですね」
初めてのW杯を戦い終えた24歳の冨安健洋は、絞り出すように言葉を紡いでいた。
チームはベスト16に進出。目標だったベスト8入りの夢はまたしても阻まれたが、ドイツ、スペインといった強豪を撃破し、決勝トーナメントでは4強に進出したクロアチア相手にPK戦までもつれる接戦を演じた。収穫の多かったW杯と振り返ってもいい。ただ、個人のプレーに目を移すと、冨安にとっては「不完全燃焼のW杯」だったのかもしれない。
吉田麻也の後を継ぐ次世代のDFリーダー。世界最高峰のプレミアリーグで首位を走るアーセナルで活躍――今の日本代表の選手でも、最も世界のトップに近い存在と言っても過言ではない。その“肩書き”がW杯での一層の飛躍を期待させた。
しかし、大会前の負傷の影響で初戦のドイツ戦はベンチスタート。アップセットのきっかけを作ったシステム変更の重要な1枚として後半頭から3バックの一角に投入されて存在感を発揮したものの、試合後は別メニュー調整。コスタリカ戦は欠場し、続くスペイン戦では68分から“クローザー”として出場。クロアチア戦は120分間フルで戦い抜いたが、勝利に導けなかった。
翌日の会見では涙を流すシーンも
「僕の中で今大会は今日(クロアチア戦)も含めてトップパフォーマンスを出せた試合はなかったですし、怪我もあって……もう嫌になりますね。今、自分は良くないサイクルにあるんだと思います。ただ、分かっていることはやり続けないといけない、どこかでこのサイクルを断ち切らないといけないということです」
森保一監督の中で重要な戦力だったことは疑いないが、万全の状態でW杯に臨めなかった印象は拭えなかった。