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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
W杯優勝で「500万人集まるとか狂乱の極み」「電柱・信号よじ登り→落下続出」アルゼンチン絶頂… 宿敵ブラジルも前代未聞の絶賛
posted2022/12/22 11:04
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
世界には、狂気にも似た情熱を大量に放射する人で溢れた国がある――。
12月18日夜(カタール時間)、ワールドカップ(W杯)決勝で連覇を夢見るフランスを延長、PK戦の末に下して36年ぶり3度目の優勝を達成したアルゼンチン代表は、19日午前3時、ドーハを飛び立った。
到着前から数万人が空港周辺に集まっていた
ローマで飛行機を乗り換えた後、20日午前2時23分、ブエノスアイレスのエセイサ国際空港へ到着。リオネル・メッシが黄金の優勝カップを右手に高々と掲げ、リオネル・スカローニ監督と共に先頭でタラップを降りた。選手たちは「世界チャンピオン」と車体に大書されたオープントップの二階建てバスに乗り、まずは空港に隣接するアルゼンチンサッカー協会のトレーニングセンターへ向かった。
アルゼンチン政府は、この日を祝日とすると発表。すでに19日午後から、数万人が空港周辺に集まっていた。
伝統的な「アルゼンチン人であるという感情を、抑えることができない」、今大会のために用意された「若者たちよ、今、我々はまた夢を見る」などの応援歌を大合唱してバスを取り囲んだ。
選手たちは、トレーニングセンター内の宿泊施設で休憩した後、午前11時半、市の中心部へ向けてパレードを始めた。バスの上で楽器を奏でながら大声で歌い、満面に笑みを浮かべて飛び跳ね、沿道の観衆に手を振ってすさまじいまでの歓呼に応えた。
首都圏の人口のうち約3分の1が集まった
アルゼンチンは、今年のインフレ率が100%近くに達し、深刻な経済危機の真っ只中にある。このような状況で、アルビセレステ(アルゼンチン代表の愛称)の壮挙は人々に大きな力を与えた。束の間ではあっても、日々の苦難を忘れさせてくれた。
南半球にあるブエノスアイレスは真夏で、この日の最高気温は30度に達した。強い陽光を浴びながら、選手たちも市民も幸せを噛み締めていた。
この町には、市民が大挙して集まる場所がある。オベリスコだ。
16車線、幅が140m前後もあって世界で最も幅が広いとされる7月9日大通りとコリエンテス通りが交差する共和国広場に屹立する67mの白亜の塔。その周辺には広大なスペースがあり、約100万人が集まることができる。すでにここは、朝から人、人、人で埋まっていた。