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W杯優勝で「500万人集まるとか狂乱の極み」「電柱・信号よじ登り→落下続出」アルゼンチン絶頂… 宿敵ブラジルも前代未聞の絶賛 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byKiichi Matsumoto/JMPA

posted2022/12/22 11:04

W杯優勝で「500万人集まるとか狂乱の極み」「電柱・信号よじ登り→落下続出」アルゼンチン絶頂… 宿敵ブラジルも前代未聞の絶賛<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

W杯決勝、メッシのPK成功に大きく沸くアルゼンチンサポーター。英雄の帰国後も大変なことに

 それだけではない。オベリスコへ向かう道路の周囲も人で埋め尽くされ、スポーツ紙『オレ』は「狂乱の極みだ。400万を超える人々が集結した」と伝えた(その後、集まった人の総数は推定500万人と報じられた)。

 ブエノスアイレスの人口は303万人だが、近郊を含めると1562万人。実にその約3分の1が集結したことになる。

 1863年にルールが制定されてから159年を数えるフットボールの、そして1930年に第1回大会が行なわれてから92年のワールドカップの歴史で、間違いなく最大の優勝パレードとなった。

あまりの熱狂ぶりにヘリコプターで戻るハメに

 膨大な数の警官が警備にあたったが、群衆は少しでも近くで選手たちを見ようと押し寄せる。無謀にも陸橋から2人の男がバスの屋根へ飛び降り、1人が道路へ落下する事故が起きた。

 トレーニングセンターを出発してから4時間半が経過した午後4時を過ぎても、バスはまだオベリスコまで辿り着けない。飛び降りによる事故が起きたこともあり、警察は「治安上の懸念」からパレードの中断を決定。バスは、10時間以上前から選手の到着を待ちわびていた人もいたオベリスコへ行かないことが発表された。

 警察は「20日までに350人以上が電柱、信号、交通標識、陸橋、樹木などによじ登ってアルゼンチン代表の勝利を祝っていて落下し、負傷した」と報じていた。この決定はやむをえないものだっただろう。

 大人たちは、残念がりながらもこの非情な決定を何とか受け入れようとした。しかし、子供たちはそうはいかない。選手たちが来ないことを知って、泣きじゃくる子が少なくなかった。

 アルゼンチンサッカー協会クラウディオ・タピア会長は「残念ながら、選手たちはオベリスコに集まってくれた大勢の人たちに挨拶することができなかった。非常に申し訳ない」というコメントを発表。選手たちは、ヘリコプターに乗り換えて市の上空を飛んだ後、パレードの出発地点であるトレーニングセンターへ戻った。

「メッシとマラドーナはどちらが偉大か」

 今大会でアルゼンチンを優勝に導いた最大の立役者は、もちろんメッシだ。

 子供時代は、極端なまでに内気だった。13歳でバルセロナのアカデミーに入団した頃はほとんど誰とも会話をせず、当時のチームメートが「彼の声を聞いたことがない」と語るほど無口で人見知りする性格だった。

 しかし、今大会ではキャプテンとして常にチームの先頭に立ち、必要とあれば対戦相手の選手や監督にも強い口調で抗議。アルゼンチンのメディアは「まるでマラドーナが乗り移ったかのような振る舞いで、チームを優勝へ導いた」と伝えた。

 決勝の試合後、アルゼンチンのスポーツ紙『オレ』は、「メッシとマラドーナはどちらが偉大か」という読者アンケートを実施した。

【次ページ】 アルゼンチンを応援するはずのなかったブラジルが

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