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ブラジル「物議の韓国戦ゴール後ダンス」に“ビニシウス差別問題”の伏線… 監督も「侮辱するつもりは毛頭ない」現地報道で深掘り
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJean Catuffe/Getty Images
posted2022/12/09 06:00
圧倒的な力で韓国を撃破したブラジル。論争となった「ゴール後ダンス」には伏線がある
これに対して、ビニシウスは「踊るのはブラジルの文化であり、我々ブラジル人のアイデンティティでもある。僕はゴール後に踊るのをやめないよ」と言い返してブラジルのメディアと国民から喝采を浴びた。
試合後、チッチ監督は「我々のダンスには、韓国選手を侮辱する意図は毛頭なかった」と釈明した。
1994年大会にアメリカ代表のCBとして出場したアレクシー・ララスは、「ブラジル選手のゴール・セレブレーションを批判するのは、人生に喜び、愛、情熱を感じない人間だけだ」とセレソンの側に立った。
ブラジルでは「踊るからゴールが生まれる」と言われる
ブラジルでは、「選手はゴールを決めたから踊るのではない。踊るからゴールが生まれるのだ」と言われる。ダンスはブラジルのフットボールと切っても切り離せない関係にあり、選手が伸び伸びとプレーしてゴールを決め、感情を解き放って楽しそうに踊り、さらにゴールを決めることは大きな意味を持つ。
その一方で、「試合に勝つだけでは不十分。圧倒的な強さを発揮して勝たなければならない」とも言われる。韓国戦は、その通りの試合だった。
12月9日(日本時間では10日)に行なわれる準々決勝の相手は、クロアチア。セレソンが韓国戦のように相手守備陣を左右に揺さぶりながら即興的にパス交換をしてチャンスを作ることができれば、クロアチアのゴールをこじ開けることは十分に可能だろう。
また、現在のチームは過去に例がないほど守備が安定しており、大崩れすることはなさそうだ。
エースが復帰し、最高の形で勝って、チームに大きな勢いがついた。もしセレソンが20年ぶり6度目の優勝を成し遂げるとすれば、そのための分岐点になった試合と考えていいだろう。とはいえ、セレソンがこのまますんなり優勝できるほどW杯は甘くない。まだまだ一波乱も二波乱もありそうだ。
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