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〈大ブレークの原点〉「あの伝説のスライダーも!」阪神・湯浅京己の運命を変えた伊藤智仁の“魔法の引き出し” 

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土井麻由実

土井麻由実Mayumi Doi

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photograph byJIJI PRESS

posted2022/11/26 11:06

〈大ブレークの原点〉「あの伝説のスライダーも!」阪神・湯浅京己の運命を変えた伊藤智仁の“魔法の引き出し”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「8回の男」としてブレークした湯浅。度胸満点の投球でチームのピンチを幾度となく救った

失意の時に届いた激励の「青いクマ作戦」

 阪神からドラフト6位指名を受けNPB入りした後でも、伊藤氏は湯浅の成長をずっと気にかけてくれている。プロ1年目に腰椎を疲労骨折し、治りかけた頃に再発、という悲劇が訪れた時のこと。心が折れかけていた湯浅に、伊藤氏から激励が 届いた。

「焦るな 怒るな 威張るな 腐るな 負けるな 青いクマ作戦」

 「青いクマ」は文章の頭の文字の「あおいくま」をとった語呂合わせ。続いて「リハビリは強くなって戻ってきて成功。頑張れ!」と記されていた。

「智さんからのメッセージのおかげで切り替えられたし、『強くなって復帰しよう』ってスイッチが入りました」

 常に目に入るよう、グラブに「青いクマ」の顔をデザインした刺繍を入れた。ブレークした今も、湯浅にとって大切にしている言葉だ。

 伊藤氏が古巣のスワローズに復帰してからは、一軍に上がって対戦時にあいさつに行くのが目標だったが、今年ようやく叶った。

 恩師の第一声は、「頑張ってるな」という誉め言葉。続けて、「体は大丈夫か」と気遣ってくれた思いに胸が熱くなった。目の前で燕打線と対峙した今季は、11試合で防御率0.00。奪三振率も12・27と対戦チーム別ではトップの成績を残し恩返しを果たした。

 今季は「8回の男」としてブレークし、59試合に登板して45ホールドポイント。最優秀中継ぎ投手という堂々のタイトルホルダーになった。3位で進出したDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでは抑えに抜擢され、DeNA打線を力でねじ伏せて鮮烈な印象を残した。

 そういえばプロ2年目を迎えた2020年の新年に、湯浅は「今年は復活して一軍に上がって、新人王を獲る!」と思いを明かしていた。腰痛が再々発してその年には復帰できなかったが、権利を有したまま今年を迎え、「復活」の誓いを現実のものにした。

 もう一つの「新人王」は巨人の大勢に譲ったが、成績、印象度ともに鮮やかな1年になったことは間違いない。不完全燃焼で終わった高校時代、独立リーグでの奮闘、そして度重なる怪我を乗り越えて掴んだ大ブレーク。ただ、これはあくまでも通過点である。さらなる高みに向かって、湯浅はこれからも全力で走り続ける。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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