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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ドラフト抽選「くじ引く人」はどう決める? 天中殺、競馬の強さ、就任直後の新監督…あの“通算勝ち星7位”の名将は「通算10連敗」だった
posted2022/10/20 11:07
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
JIJI PRESS
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるならば、それはまだ努力と呼べない」
前人未到の通算868本塁打を放った王貞治は現役生活中、どんなハードルも練習に練習を重ねて乗り越えてきた。しかし、巨人監督時代の1985年のドラフト前日、重複濃厚な清原和博のくじ引きについて聞かれると〈縁起をかついだり、身を清めれば当選するというのならそうするけど、こればっかりはね…〉(1985年11月20日付・スポーツニッポン)と悟っていた。天に運を任せるしかないと思われる『ドラフト抽選』に“持っている男”や“持っていない男”は存在するのか――。(全2回の#1/#2へ)※敬称略、名前や所属球団はドラフト当時
前人未到の通算868本塁打を放った王貞治は現役生活中、どんなハードルも練習に練習を重ねて乗り越えてきた。しかし、巨人監督時代の1985年のドラフト前日、重複濃厚な清原和博のくじ引きについて聞かれると〈縁起をかついだり、身を清めれば当選するというのならそうするけど、こればっかりはね…〉(1985年11月20日付・スポーツニッポン)と悟っていた。天に運を任せるしかないと思われる『ドラフト抽選』に“持っている男”や“持っていない男”は存在するのか――。(全2回の#1/#2へ)※敬称略、名前や所属球団はドラフト当時
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ドラフト史に残る2つの“珍事”
「阪神か、ヤクルトか。ヤクルトです! 真中監督が引きました!」
2015年、東京六大学の最多安打記録を更新した高山俊(明治大学)を巡って、阪神の金本知憲監督とヤクルトの真中満監督がくじに臨んだ。司会の関野浩之が「それでは開けてください」と促すと、真中監督は電光石火の速さで左手を高らかに上げた。わずか2秒、アナウンサーの実況が追いつかないほどのスピードだった。
インタビューに臨んだ真中監督は喜びを隠せない表情で、「いちばん初めに開いてやろうと思ったので良かったです」「チームを代表するような選手になってもらいたいです」「慣れ親しんだ神宮球場だと思いますので、一緒にヤクルトでプレーしましょう」と饒舌に畳み掛けた。
数分後、日本野球機構(NPB)が間違いに気付き、阪神が高山の交渉権を獲得していたと判明。金本監督は笑顔に変わり、真中監督は視線が定まらず動揺を隠せなかった。
この出来事は、ドラフト史上最大の珍事として記憶されている。ただ、金本監督が“持っている男”、真中監督が“持っていない男”とは言い切れない。高山は1年目に球団新人記録の136安打を放って新人王に輝いたが、3年目から不振に陥った。昨年は1軍で全く出番がなく、今年は38試合の出場と伸び悩んでいる。一方、ヤクルトの外れ1位・原樹理は即戦力と期待されながら、1年目は2勝8敗、2年目は3勝11敗と結果を残せなかったが、今年は主に先発で8勝を挙げた。