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東京五輪世代・橋岡大樹はW杯へ「最後までもがきたい」 香川も岡崎も「絶対に準備しておくべき」…そして奮い立った“恩師”の言葉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/10/15 17:00
ベルギーで経験値を積む橋岡大樹。東京五輪世代のDFとしてステップアップを誓う
――加入から3シーズン目に入り、そろそろステップアップを意識しているんじゃないですか?
「もともと1年半でステップアップすることを目標にしていたのに、この夏で1年半が経ってしまって。昨シーズンもずっと起用されていたので、正直、このままやっていれば移籍できるだろうと思っていたんですけど、それでも無理だという現実を突きつけられた。
だから、今シーズンはもっともっと頑張って、いいパフォーマンスを維持して、オファーを掴み取ってやるという気持ちで臨んだら、周りの評価が変わってきた。いろんな人から、『今シーズン、すごくいいね』と言われることが多いんです。この冬か、来年の夏にはステップアップしなきゃいけない、という危機感を持ってやっています」
――1年半ぐらいやれば移籍できるだろうというフワッとした意識から、そろそろ移籍しないとヤバいぞという危機感に変わった。その意識の変化が、日々の取り組みへの姿勢を変えたということですね。
「実際には昨シーズンのウインターブレイク明けから、自分の中で変わってきた感覚があります。昨年は夏に東京オリンピックが終わって、シーズンの最初のほうは良かったんですけど、その後、1、2カ月くらいあまり良くなくて。そういうプレーを続けていると、『ハシオカは不安定だな』と見られて、移籍が難しくなる。それで、ウインターブレイク明けから、俺は絶対に移籍する、と覚悟を決めて臨んだから、いいプレーができるようになった。それでも移籍できなかったので、今シーズンはより意識を高めてプレーしています」
香川、岡崎から助言された“メンタルの波をなくすこと”
――シント=トロイデンには現在、欧州のサッカーシーンで10年以上生き抜いてきた香川真司選手と岡崎慎司選手が在籍しています。ステップアップを目指すうえで、彼らからアドバイスは?
「一番はメンタルの波をなくすことですね。『落ち込んでいる暇はない。次の試合はどんどん来るから一喜一憂せずにやっていくことが大事だよ』と。ここには日本人選手も日本人スタッフもいるので、悪かった試合のあと、慰めてくれたり、愚痴を聞いてくれる人がたくさんいるじゃないですか。でも、ステップアップしたら日本人がいないチームで戦うことになる。そこで頼れるのは自分しかいない。だから、自分で消化して、切り替えられるようにしないといけないと。そういう意味では今、緩みが出ないように、自分で自分にプレッシャーをかけてやっていますね」
――スタメンで出ることに慣れてしまわないように。
「少しでも悪いプレーをしたら、次の試合は出られないという感覚で。1試合1試合、最高のパフォーマンスをしてやろうという気持ちでやっています。それは当たり前のことなんですけど、人間ってどうしても慣れが出てしまうので。謙虚さを欠かないように、隙を見せないようにしています」