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1年前は“ドラフト1位”と予想できなかった…ソフトバンクが指名公表「イヒネ・イツア」とは何者か? 守備の名手は“課題あり”とキッパリ
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph byPPAB-lab.
posted2022/10/13 11:02
ナイジェリア人の両親から受け継いだ高い身体能力を生かした打撃とスピードが魅力のイヒネ・イツア。ソフトバンクがドラフト1位指名を公表している
今年の東海地区の高校生は候補が少ないという話をしていた時に「誉のイヒネはどうですか?」と聞いたところ、間髪を入れずに「あれはちょっと面白いですね。他にいないタイプの選手ですよ」と言われたのをよく覚えている。普段、選手に対する評価が比較的“辛口”な発言が多かったスカウトだっただけに、俄然イヒネに対する興味が湧いた。
しかし、誉高校は春の県大会でも初戦(2回戦)で敗退。何とか試合を見る機会はないか調べたところ、『全尾張大会』というローカルな大会に誉が出場していることが分かったため、5月28日に行われた横須賀高校(中日・福谷浩司の出身校)との試合に足を運んだ。
ローカル大会に10人のスカウトが集結
会場となった小牧市民球場に着いて、まず驚かされたのがスカウト陣の多さだ。
筆者が到着した時は1球団だけだったが、開始前までにどんどん増えて6球団、10人のスカウトが集結。地元メディアの話では、この前の試合でも同じくらいのスカウトが来ていたという。球団数と人数からも分かるように、東海地区の担当スカウトだけでなく、管理職も姿を見せていたところにその注目度がよく表れている。
プレー面で言えば、最初に目に留まったのはその身のこなしだ。試合前のランニング、キャッチボールから1人だけその躍動感は明らかに違っており、高校生の中にマイナーリーガーが混ざっているような印象を受けた。シートノックの動きは少しぎこちなさも感じられたが、三遊間の深い位置から速い送球を見せ、肩の強さも申し分ないことがよく分かった。試合でも4度のショートゴロを無難に処理している。
そして、この日のハイライトとなったのが、4回に迎えた第3打席である。