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1年前は“ドラフト1位”と予想できなかった…ソフトバンクが指名公表「イヒネ・イツア」とは何者か? 守備の名手は“課題あり”とキッパリ 

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西尾典文

西尾典文Norifumi Nishio

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photograph byPPAB-lab.

posted2022/10/13 11:02

1年前は“ドラフト1位”と予想できなかった…ソフトバンクが指名公表「イヒネ・イツア」とは何者か? 守備の名手は“課題あり”とキッパリ<Number Web> photograph by PPAB-lab.

ナイジェリア人の両親から受け継いだ高い身体能力を生かした打撃とスピードが魅力のイヒネ・イツア。ソフトバンクがドラフト1位指名を公表している

 外角寄りの高めのボールを打ち返した打球はセンターの頭上を越え、試合の行方を決定づける2点タイムリースリーベースとなったが、際立っていたのがスイングとベースランニングだ。

 見送ればボールにも見えた高さだったが、そんなボールに対しても体を鋭く回転させて対応。左肩が下がることなくうまくかぶせるようにしてセンター後方まで飛ばして見せたのだ。体幹、特に背筋の強さがなければこのようなバッティングはできないだろう。

 そして一塁を回るとどんどん加速し、12.00秒を切れば俊足と言われる三塁到達タイムは11.34秒をマークしている。上半身がぶれることのないランニングフォームからも、只ならぬ運動能力が感じられた。イヒネのプレーとその成長ぶりについて担当スカウトは以下のように話している。

「2年の秋から3年の春にかけて急激に良くなりましたね。守備は細かいステップやハンドリングはまだまだですけど、打球に対する反応が鋭いですし、肩の強さもある。バッティングもだいぶボールを呼び込んで打てるようになりました。甲子園に出ていた選手を含めても、今年の高校生でこれだけスケールのあるショートは他にはいないと思います。(一軍の戦力になるには)かなり時間がかかるタイプですが、ひょっとしたら球史に残る選手になるかもしれない。そんな期待感を持たせる選手ですよね」

 夏の愛知大会でも前述したように3回戦で敗れたが、2試合で7打数5安打、ホームラン1本を含む長打4本の大活躍で、更に成長した姿を見せている。他のスカウトも「練習や練習試合も含めて何度も見に行きましたが、見る度に成長しています」と話しており、練習熱心な姿勢、そしてイヒネの将来性をソフトバンクが高く評価したと言えそうだ。

昨年も風間球打の1位指名を公言

 今年は大型ショート候補が少なく、今宮健太の後継者を探すソフトバンクとしては何としても確保したい素材だったのだろう。昨年、風間球打の1位指名を公言して一本釣りに成功したことも、今回の決断に影響を与えていそうだ。

 気になるのは、競合覚悟で指名をする球団が現れるか、である。地元である中日や最近スケールの大きな高校生を指名する傾向が強いオリックスも可能性はあるが、単独指名はほぼ確実と見ている。

【次ページ】 「あの足と肩はなかなかないものですが…」

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