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ぶら野球BACK NUMBER
「プロ野球史上最高の視聴率48.8%の試合といえば?」日本人はいつからテレビで野球を見なくなった? 小学生男子が巨人4番の名前を言えた時代
posted2022/10/13 11:01
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
KYODO
「あたしは与田圭子っていいます。えっと中日の与田投手のヨダ」
「俺も近鉄の野茂のノモ!」
これは1990年(平成2年)秋にフジテレビ系列で放送された月9ドラマ『すてきな片想い』のワンシーンである。“ギバちゃん”こと柳葉敏郎が演じる野茂俊平は『プロ野球ニュース』の生放送を見るためにダッシュで帰り、主題歌『愛してるっていわない!』を歌う中山美穂がヒロインの与田圭子だ。さらに劇中には潮崎豊や佐々岡ケンも登場。そう、90年にプロ野球界で大活躍した新人選手の名字が役名の由来となっている。
それだけ90年代の黄金期のプロ野球と絶頂期のフジテレビは近い関係だった。94年9月3日にはその集大成的な映画『ヒーローインタビュー』が公開される。トレンディ・ベースボール・ムービーというなんだかよくわからないジャンルで、スポーツ部に左遷された元エリート経済記者の霞には鈴木保奈美、その相手役の崖っぷちベテランプロ野球選手・轟を演じるのは真田広之。94年当時、28歳の鈴木保奈美は『東京ラブストーリー』や『愛という名のもとに』といった大ヒットドラマのヒロイン役を務め視聴率女王的な立ち位置だったし、真田広之も前年に出演したTBSドラマ『高校教師』で人気に火が付き、雑誌『anan』の「好きな男ランキング」で1位に輝くギラギラの33歳だ。
もちろんフジ製作作品と言えば舞台の球団はヤクルトスワローズである。脚本を担当したのは90年代のヒットメーカー野島伸司、監督は『素顔のままで』の光野道夫、プロデューサーが『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』等で知られる大多亮のビッグプロジェクト。東京タワーの煌びやかな夜景をバックにCHAGE&ASKAが歌う主題歌『HEART』が鳴り響く中、もちろん豪華オールスター出演陣が顔を揃える。ヤクルト監督役にはノムさんの背番号73をつける武田鉄矢、バツイチ轟の娘役には同年のドラマ『家なき子』でブレイクした安達祐実、ライバルチーム横浜の投手が『妹よ』の兄役が話題の岸谷五朗、バッテリーを組む痩身ロン毛のキャッチャー(むちゃくちゃな設定)は『ひとつ屋根の下』のアンちゃんこと江口洋介、さらに当時“フェミ男”として人気を二分していた武田真治&いしだ壱成もスポーツ記者役で揃って出演している。主人公がデッドボール恐怖症なのに耳当て付きヘルメットを頑なに使わないオレ流スタイルとか劇中の野球描写の詰めの甘さは言及するだけ野暮だが、「有名人がいっぱい出てるから観にいこっか」と街行く老若男女に思わせるメンツだったことだけは確かである。