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「リツほどのレベルなら…」なぜ堂安律は“短所をプレゼンされた”フライブルク加入後、好調なのか「答えは単純。僕は何を言われても」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/10/10 17:02
日本代表での活躍も期待される堂安律。フライブルクで好調の要因は?
フライブルクは、かつて浦和レッズを指揮したフォルカー・フィンケ氏が16年にわたって監督を務めるなど、育成型のクラブだった。
ただ、昨シーズン途中には、新スタジアムであるオイロパ・パーク・シュタディオンがオープン。収容人数は24000人から、34700人へと1.45倍に増えた。そんなシーズンにブンデスリーガ6位に入ったことで、9年ぶりにヨーロッパの舞台(EL)へと返り咲いた。
クラブの変貌はピッチ外にも現れている。例えば、今シーズンから新たな胸スポンサーになったオンライン中古車販売会社の「Cazoo」。彼らは、以前の胸スポンサーが支払っていた年間400万ユーロの1.75倍となる700万ユーロを支払うことで合意している。
クラブ変革の象徴としての存在が堂安
クレメンス・ハルテンバッハSD(スポーツディレクター)は明言している。
「前回ELへ出場したときと、今とではスタート地点が違うよ。あのときは(EL出場権を獲得したあとに)レギュラーが5人もいなくなったけど、今はそんなことはない。選手の質も量も、さらに成長したんだ」
昨シーズン終了後に抜けた主力は、ドルトムントへ移籍したドイツ代表のニコ・シュロターベックくらいだろう。ただ、その穴埋めとして、同じくドイツ代表のマティアス・ギンターを獲得できたわけだから、9年前とは状況が大きくことなる。
育成型クラブから、ヨーロッパカップ戦の常連へ。
そんな変革の象徴が堂安なのだ。
初対面で〈短所〉を挙げられたという堂安だが、それはフライブルクから高く評価されているという大前提の上で、だ。
例えば、昨シーズンのフライブルクには個の力で打開できる選手がいなかった。だから、2シーズン前にリーグでドリブル数が2位だった堂安に目をつけた。
さらに、堂安が貴重な左利きの選手だということもプラスに働いた。何しろ、昨シーズン終了時点で攻撃的なポジションには左利きの選手がおらず、堂安は戦いの幅をもたらし得る存在だったからだ。
一昨シーズンが終わった時点から、ドイツ内外の多くのクラブが堂安に興味を示していることが報じられてきた。その数多あるオファーの中から堂安が選んだのが、長所だけではなく〈短所〉も指摘してくれたフライブルクだった。
堂安はなぜ〈短所〉への提示に可能性を見出したのか
では、堂安はなぜ〈短所〉を提示するという常識外のメッセージに可能性を見出したのか。
ホッフェンハイム戦後、取材の最後にこの旅のテーマとなる疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。これが真相だった。