核心にシュートを!BACK NUMBER
「リツほどのレベルなら…」なぜ堂安律は“短所をプレゼンされた”フライブルク加入後、好調なのか「答えは単純。僕は何を言われても」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/10/10 17:02
日本代表での活躍も期待される堂安律。フライブルクで好調の要因は?
今から2シーズン前、アルミニア・ビーレフェルトの一員として戦っていたときと比較して、枠内シュート率が飛躍的に伸びているのだ。90分あたりの平均シュート数とあわせて、比べてみよう。
2020-21シーズン 枠内シュート率:30.9% 平均シュート数:2.13本
2022-23シーズン 枠内シュート率:46.2% 平均シュート数:2.28本
少しずつサッカーの理解度が高まっていると思う
当時は残留争いをしていたビーレフェルトと、上位のフライブルクとではシュートを打てるシチュエーションに違いはある。
それでも、シュート数は微増レベルにもかかわらず、枠内シュート率が約1.5倍も向上している。となると、違うチームにいるというだけで説明はつかないだろう。その要因について、堂安はこんな風に考えている。
「正しいポジショニングから、正しい仕掛けができているからだと思います。変な形でボールを失うこともなくなったと思います。少しずつですけど、サッカーの理解度が高まっていると思うので、それが要因かなと」
昨シーズン、堂安はオランダのPSVアイントホーフェンで知将ロジャー・シュミットの下、色々なものを吸収してきた。これまで良い指導者と出会いながらもコツコツと取り組んできた下地があるから、育成に定評のあるシュトライヒの下に来たとき、スポンジのように様々なものを吸収できるのだ。
「長所だけ指摘して彼が“成長する”と思うかい?」
とはいえ冒頭の話に戻るが――初対面で監督が選手の〈短所〉を挙げるのは、反感を覚える選手もなかにはいるはずだ。
堂安がそれを受け入れられた理由は後述するとして、シュトライヒはなぜ、リスクを冒してまで〈短所〉を指摘するのだろうか。
その理由を、堂安への圧倒的なリスペクトとともに、こう明かした。
「リツほどのレベルの選手は常に上を目指している。長所だけを指摘して彼が『成長する』と思うかい? 確かに、移籍してきて最初の2、3試合で自信を持たせるためには、それでも良いのかもしれない。
ただ、監督の役割は、選手と状況を話し合って、できるかぎりベストな状態を作り上げることにある。そのためには長所を指摘するだけじゃ意味がないのだよ! まぁ、私がもともとユース世代の監督だから、そうやって考えられるのかもしれないけどね」
なお、「リツほどのレベル」という言葉には、少し補足が必要だろう。
実は堂安の移籍は、フライブルクがクラブ変革を対外的に示す重要なアクションでもあったか。何しろ、彼の移籍金はクラブ史上2番目の高額となる850万ユーロ(約12億円)なのだから。