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「リツほどのレベルなら…」なぜ堂安律は“短所をプレゼンされた”フライブルク加入後、好調なのか「答えは単純。僕は何を言われても」
posted2022/10/10 17:02
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
「僕が一番嬉しかったのは、僕の『短所』も監督がよく理解してくれていたことで。(監督からは)『俺はオマエのそういうところを直して、育てたい』というのも伝えられて……」
今年8月、開幕を前にブンデスリーガとスカパー!による共同マーケティングを含めた企画の一環で堂安律にゆっくり話を聞く機会があった。ご存じのとおり、堂安は大きな期待を受け、2年ぶりにブンデスリーガへ帰ってきた。変革を迎えつつあるSCフライブルクの主力として。
そんな彼が口にした〈短所〉というキーワード。移籍の理由としては前代未聞のものだった。
負けず嫌いがゆえに〈短所〉に反応した
移籍市場では、選手の心を射止めるために甘い言葉が飛び交う。
「君がうちのクラブには必要なんだ」
「私たちは君の○○なところを評価している」
だから、そうしたものとは対極にある、堂安のコトバには耳を疑った。
短所? そしてそれが、嬉しい?
一体、なぜ。
24歳ながら、ヨーロッパでの戦いが6シーズン目を迎える堂安が、ストイックだからなのか、負けず嫌いがゆえに〈短所〉という表現に身体が反応したからなのか、それとも……。
フライブルク監督の興味深い“リツ評”
謎を解き明かす旅は、そんな疑問からスタートした。まずカタールのドーハを経由して、ギリシャの首都アテネヘと向かった――。
「私はビデオに収められた試合のなるべく全ての場面を確認するようにしているんだ。他のコーチとも協力しながら、『あそこでの寄せが1m足りてないぞ!』とかね。
今日のあの場面、わかるかい? 守備でプレッシャーをかけにいき、“リツ”がボールを取れそうだったシーンだ。あと2m高い位置をとっていればボールを奪えて、一人でゴールまで行けたかもしれない。そうしたポジショニングについて、我々は話をしないといけない。たとえ、それが1mの差だったとしても、私は話しにいくだろうね」
言葉の主はクリスティアン・シュトライヒ。
フライブルクの監督として、12シーズン目を迎えている57歳だ。
予算の限られていたチームを6位に導いた昨シーズン、『キッカー』誌によるドイツ最優秀監督賞に選ばれた。フライブルクのU-19など育成年代の指導を16年にわたって務め、2011年12月29日から現職についている。
ギリシャの首都アテネの郊外にあるピレウス。ELオリンピアコス戦で3-0の完勝を果たした名将は饒舌だった。そしてシュトライヒが語った言葉は、筆者の「選手を成長させるうえでもっとも大切なものは何か?」という質問への答えだ。堂安の例をわざわざ挙げたのは、日本からやってきた記者へのサービス精神からだろう。