話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「代表入りで『父と肩を並べられた』と言ったが…」E-1選手権で初選出、水沼宏太32歳に芽生えた日の丸への執念「この場所にずっと居続けたい」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2022/10/07 17:28
7月のE-1選手権、勝てば優勝という韓国戦にスタメンで出場した水沼宏太。代表でプレーし感じたことをインタビューで聞いた
「僕の特徴は、新しい選手とプレーする場合、その選手のことを観察して、短い間に選手の特徴を把握し、自分がどうしたらこの選手の特徴が活かせるか、どう動いたら自分を活かしてもらえるのかということを考えられることだと思っています。それができるようになったのは、いろんなチームにいってプレーした経験があったからでしょうね」
水沼はF・マリノスに入団し、2年半プレーした後に活躍できる場を求めて外に出た。栃木に始まり、鳥栖、FC東京、セレッソ大阪と4チームを渡り歩き、各チームで自分が生きる術を探して、それを武器にして生き残ってきた。年齢が上がっていくと当然、視線は厳しくなるが、そういう声にも動じずに、年齢は関係ない、プレーで勝負という意識でやってきた。そうして、いろんなクラブでプレーした経験が、水沼の個性となり、それが代表でも活きた。
いきなり代表に呼ばれたとしても「できない」はない
「移籍の際、移籍先など決断を間違えなかったので、各チームで今の自分の身になる経験ができたと思います。この4チームでの経験がなければ、僕は今の経験値を活かしたサッカーをすることが出来なかった。自分が所属したクラブ、チームメイトには感謝の気持ちしかないですね」
E-1の香港戦では、相手が格下で優位に試合を進めることができて快勝した。それでも水沼は、よりよくプレーするために他選手と会話をかわし、プレーの確認をつづけた。
「僕は、人と話をするのが好きなんですよ。代表は活動期間が短いので、そこで話をしてお互いのことを知り、活かし活かされるということをやっていけば、チームも自分も輝ける。だから、いきなり代表に呼ばれたとしても『できない』はないですね。むしろ絶対にできると思っているので、そういう自分の特徴は今回の代表でも、これからにも活かしていきたい」
国内組の自分たちもできるんだよ
水沼は、3戦目、勝てば優勝という韓国戦にスタメンで出場。右サイドバックの小池龍太、トップ下の西村拓真、ボランチの藤田譲瑠チマ、岩田智輝らとともに攻守に貢献。とりわけ右サイドからの攻撃は、よく知る仲間たちと呼吸を合わせた連携を見せ、これまでの代表にはない崩しを見せた。そうして、3-0で韓国を圧倒し、優勝を決めた。
「あの短い期間で、それほど期待されていない中、優勝できたのはすごく手応えを感じることができました。今回の代表には海外組の選手がいなかったんですが、国内組の自分たちもできるんだよっていうのを見せることができたし、Jリーグのレベルの高さを示すこともできたと思います。森保(一)監督からは終わってから『ありがとう』と言葉をかけてもらいました。こちらこそありがとうございましたという気持ちでしたが、最後に感謝の言葉をかけてもらったのは、すごくうれしかったですね」