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「代表入りで『父と肩を並べられた』と言ったが…」E-1選手権で初選出、水沼宏太32歳に芽生えた日の丸への執念「この場所にずっと居続けたい」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2022/10/07 17:28
7月のE-1選手権、勝てば優勝という韓国戦にスタメンで出場した水沼宏太。代表でプレーし感じたことをインタビューで聞いた
父からは「おめでとう。点取れたらよかったね」
優勝カップを掲げ、水沼は心からその瞬間を楽しんだ。同時に、この楽しい瞬間が終わってしまう寂しさも感じた。
「代表は、本当に特別な場所だなって思いました。サッカー選手をやっている上でずっと目指してきたところがここだったんだなって思いながら、代表のユニフォームを着てプレーして……サッカー選手って、多くの人に夢や希望、感動や勇気を与えられる職業だと思うんですけど、僕らサッカー選手にも夢がある。年齢は関係なく、諦めなければ夢は叶うということをみんなに伝えることができたのかなと思います」
E-1で優勝後、父からは「おめでとう。点取れるチャンスがあったけど、それで点取れたらよかったね」という言葉をもらった。
日本代表でプレーするというひとつの夢は叶った。だが、ひとつ達成すれば、その先に進みたくなるのがアスリートだけではなく人間の性だ。水沼は一度、代表でプレーしたことで、代表への気持ちが以前よりも大きく膨らんできている。
ドイツ遠征に選ばれなかったのですごく悔しかった
「日の丸をつけて戦うというのは、サッカー選手としてすごく幸せなことだなっていうのは試合に出て感じましたし、この場所にずっと居続けたいという気持ちにさせてくれました。また、すぐにでも行きたいと思いましたが、ドイツ遠征に選ばれなかったのですごく悔しかったです。W杯前の大会に選んでもらって閉ざされた扉が少しは開いた感覚があったので、これからも継続して代表に呼ばれ、試合に出られるようになりたい。その気持ちがさらに強くなりました」
カタールW杯は、もう目前だ。11月1日には26名のメンバーが発表される。W杯は、水沼にとって、どういうものなのだろうか。
これまでW杯はテレビで見る大会でした。でも…
「これまでW杯はテレビで見る大会でした。出たい気持ちはあったけど、そのレベルにはまだ自分は達していないと思っていましたし、代表にも呼ばれていなかったので、自分が出る期待感はなかったです。でも、E-1で代表に呼ばれてプレーしたことでテレビで見る大会という意識はまったくなくなりました。本当に行きたい気持ちが純粋にあるだけなので、最後まで絶対に諦めずに全力でやれることをやっていきたいです」
ドイツ遠征には招集されなかったが、それで26名のメンバー入りの可能性がゼロになったわけではない。今後も特に何かを変えることなく、自分のプレーを継続していけば、その延長線上に見える扉が再び開く可能性は十分にある。
<#3へ続く>
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