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「やっぱり紗理那はショートが一番いい」古賀紗理那が世界バレー直前に髪を切った本当の理由「かわじい、見守ってくれていますよね」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2022/09/28 11:03
キャプテンとしてバレーボール女子日本代表を牽引する古賀紗理那(26歳)。世界選手権を前に、伸ばしてきた髪をバッサリ切った
ワールドカップが終わり、Vリーグが開幕するまでのわずかな休暇に古賀は熊本へ帰省し、佐賀へ住む祖父母に会いに行った。豊かな自然と大好きな家族との時間は「癒し」と話すが、年に一度会えるか、会えないか。以前会った時よりも年老いていく祖父の姿を目の当たりにし、休暇を終えて帰京してから数日経った夜。突然、涙があふれてきた。
「かわじいも一生ずっといてくれるわけじゃないんだ、元気でいるのが当たり前じゃないんだ、と思ったら、私、何やってるんだろう、って涙がバーッと出てきて止まりませんでした」
落ち込んだ時や、試合に負けた時、家族とテレビ電話をしたり、父や母が撮った動画が送られてくる。両親が「紗理那に頑張れ、って言ってあげなよ」と動画を撮り始めたら、「頑張っているのに、頑張れなんて言わんでよか」と怒るのが祖父で、そんな祖父だからいつも全力で甘えられた。
頑張れ、とは言わないが、九州で試合があれば会場へ足を運び、日本代表の試合があればテレビで応援してくれる。このまま投げやりになって諦めたら、祖父を喜ばせることもできない。
「絶対オリンピックに出たい。出る、って思ったんです。かわじいが喜んでくれる姿を想像したら、私、いくらでも頑張れます」
“速いスパイク”のための身体づくり
コロナ渦と重なり、Vリーグが終わって間もなく日本代表の合宿も途中で解散となり、東京五輪も1年延期した。その間、サーブレシーブや攻撃自体を速くするためにセッターとのコンビ練習を重ねることと並行し、レシーブをしてからでも素早く攻撃に入るための身体づくりに努めた。
「パス(サーブレシーブ)をしてから、一気に出力して助走に入って跳ぶ。でも空中ではその出力をグッと止めないといけないので、体幹が強くないと踏ん張れない。助走の入り方でも攻撃に入る速さが変わるし、全部ほんのちょっとのことなんですけど、それが1個でも乱れるとダメ。だからとにかく何度も何度も繰り返して、鍛えて、これだ、という感覚を完璧につくれるまで、セッターとコミュニケーションを密に取りながら、徹底して練習しました」
その成果がVリーグや東京五輪のみならず、今にもつながっている。象徴が、現在開催中の世界選手権を戦う日本代表が武器とするバックアタックだ。