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「やっぱり紗理那はショートが一番いい」古賀紗理那が世界バレー直前に髪を切った本当の理由「かわじい、見守ってくれていますよね」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2022/09/28 11:03
キャプテンとしてバレーボール女子日本代表を牽引する古賀紗理那(26歳)。世界選手権を前に、伸ばしてきた髪をバッサリ切った
25日のコロンビアとの初戦、翌日のチェコ戦を共にストレートで勝利して2連勝。出場24チームが16チームに絞られる2次ラウンド進出に向け好スタートを切ったが、満足には程遠い。試合後に日本バレーボール協会や、中継局のTBSのSNSで配信されるコメントも「勝ってよかった」と言いながらも、その後すぐに「けど」がつくのが、何よりの証明だ。
パリ五輪でメダル獲得という、今はまだリアルではない目標に現実味を持たせるべく、1つ1つのピースを埋めていく。自身も、チームメイトも。技術だけでなく知力や経験、限られた時間の中で取り組むべき課題は古賀の目に、果てしないほど多く見えているはずだ。
だからこそ、妥協しない。3年前とは比べられないほど、逞しくなった姿がある。
「かわじい、見守ってくれていますよね」
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初の五輪出場を果たした昨夏、無観客で会場に家族も入れず、一番見せたかった人に直接雄姿を見せることはできなかった。
諦めず最後まで食らいつこうとした姿も、叶わず流した涙も。
できるなら、テレビの向こうで見守り、声援を送ってくれた祖父にパリの地でキャプテンマークをつけてコートに立つ姿を見てほしかった。だが、それはもう叶わない。
ならばせめて、初めてキャプテンマークをつけて臨む世界選手権は、祖父が大好きだったショートヘアで戦いたい。
28日は中国戦、世界選手権やワールドカップ、五輪も制した言わずと知れた強豪国だ。
世界選手権で1つでも上位に入るために負けられない相手であるのはもちろん、2年後のパリ五輪へ向け、日本の現在地を測るには絶好の舞台、相手でもある。
「かわじい、見守ってくれていますよね。頑張らなきゃ」
どこにいても、優しく微笑んでいるはずだ。頑張っているんだから、頑張るなんて言わんでよか、と繰り返しながら。手を叩き、楽しそうに、満面の笑みを浮かべて。
見ていてね――。
祖父への愛と、覚悟を胸に。古賀紗理那はコートに立つ。
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