「ボトムアップを始めるからと言って、今日から違う人になるわけではない。徐々に変わっていくのですが、見切り発車で試行錯誤の連続でした。外発的と内発的な動機づけのバランスは、いつも揺れ動いていました」

逆に正しいからこそ腹が立った

　キャプテンに任せると宣言しながら「まだトップダウンでやって来た名残りもあり」気が付けば矢継ぎ早に容赦ない指摘を戸田に向けていた。

　戸田にとって佐藤は「サッカーを知り尽くした怖い人」だった。

《どうしてあんなにしっかりとした理論を持ち、的確な言葉で表わせるんだろう》と畏怖の念さえ抱いていた。

　速射砲のような指摘が正しいのは理解できる。だが逆に正しいからこそ腹が立った。もし自分がヒートアップして反論しようものなら、圧倒的に論破されるのは見えていた。

　佐藤も後から振り返れば「戸田は言われたことをやっているのに、さらに厳しく言われて『じゃあ、どうすればいいんだ！』と思っていたはず」だと判るが、裏返せばそれだけ戸田に懸ける熱量や力みがあった。＜#1、#2からつづく＞

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