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タイの女性ファンに超人気…“カズジュニア”三浦孝太が殺伐としたムエタイの世界を変える起爆剤に? 過去には痛ましい“射殺事件”も
posted2022/09/04 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Getty Images
会場で飛び交う黄色い声援。いったいここはどこなのか。まさにジャニーズのライブそのものではないか!
8月19日(現地時間)、タイ・バンコク市内にあるムエタイの聖地ラジャダムナン・スタジアムで、キングカズこと三浦知良を父に持つMMAファイターの三浦孝太(BRAVE)がエキシビションマッチに出場。日本でも知名度の高い現地の英雄ブアカーオ・バンチャメークと拳を交わした試合の映像を目の当たりにして、驚かざるをえなかった。
昨年大晦日の『RIZIN.33』でデビューしたことをきっかけに、SNSを通じて東南アジア圏で20歳の三浦は一気にブレイク。とりわけタイでの注目度が高く、40歳になった現在も現役を続けるムエタイの生ける伝説と相対することになったのだ。
ギャンブルと切っても切れない関係だったムエタイ
筆者の目には試合内容より、会場の雰囲気が気になって仕方なかった。普段はリングを照らすライト以外は殺風景なセットなのに、日本の格闘技イベントのように七色のレーザー光線が飛び交う舞台演出が施された別世界になっているではないか。
客層も明らかに違っていた。いつもはギャンブラーしかいない観客席に集まったのは現地の若い女性たちで、三浦が攻めても攻められても黄色い声援を飛ばす。
日本の格闘技と異なり、タイのムエタイはギャンブルとして成立している側面がある。だからこそ途中までどちらが勝つか負けるかわからない紙一重の攻防を続け、ほんのわずかな差で勝つことが最大の美徳とされるのだ。最大の顧客はギャンブラーで、彼らはラウンドごとに賭け率を変えているから判定決着も上等。KOが称賛されるわけではない。
だからこそタイでは日本とは名勝負の意味合いが異なる。日本では試合内容が重要視されるが、タイでは「あの試合で俺はいくら儲かった」という記憶が名勝負と結びつく。
しかも賭ける金額が大きいので、賭けに負けたらすっからかんになる人も珍しくない。以前、日本ではムエタイ戦士として知名度の高い梅野源治が現地の試合に出場したときの話だ。梅野は逆転判定負けを喫したが、試合後、彼のセコンドを務めたトレーナーはトイレで悔し涙を流していた。彼は梅野の勝ちに全財産をつぎ込んでいたのだ。