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タイの女性ファンに超人気…“カズジュニア”三浦孝太が殺伐としたムエタイの世界を変える起爆剤に? 過去には痛ましい“射殺事件”も
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGetty Images
posted2022/09/04 17:00
三浦孝太は“ムエタイの聖地”ラジャダムナンで、元K-1 WORLD MAX王者のブアカーオとエキシビションで対戦。現地の女性ファンから大歓声を浴びた
コリンズが何を言いたいのかといえば、試合の賭け率によってそれが見えざる圧力となり、判定が微妙に変わってくるケースがあるということだ。2017年3月には、ルンピニーの警備員がジャッジに不満を抱いたギャンブラーに射殺されるという痛ましい事件も発生している。
三浦見たさにスタジアムに集まった女性ファンは、そんな物騒な事件が発生するところだなんて1ミリたりとも思っていまい。しかし、新型コロナウイルスの猛威によって興行は長期間休止され、じり貧に追いやられたムエタイは、コロナと共存しながら再開し始めた現在、業界全体で大きく変わろうとしている。
大相撲より先に“女子禁制”を打破したムエタイ
昨年からメジャースタジアムで女子ムエタイが解禁され始めたムーブメントもそのひとつだ。以前にも女子ムエタイは存在していたが、彼女たちの試合がメジャースタジアムで開催されることはなかった。禁止されていたからだ。
もちろん地方に行くと、女子OKのスタジアムもある。かつて筆者がバンコク郊外にある会場に足を運ぶとふたつのリングが用意されており、女子の試合になると観客と関係者はもうひとつのリングの方に移動していた。
ムエタイの“女子禁制”は徹底しており、かつてラジャダムナンで筆者はこんな場面に遭遇した。リングサイドで観戦していた欧米からの女性観光客がインターバルのときに酔った勢いでエプロン(ロープより外にあるリングの縁)に駆け上って騒ぎ始めた。すると複数の係員が鬼の形相で駆け寄り、その女性を強引に引きずり下ろしたのだ。日本でも大相撲の“女子禁制”がときとして話題になるが、ムエタイでは大相撲のそれをさらに徹底しているように見受けられた。
しかしムエタイでは大相撲より先に“女子禁制”を打破したことになる。ラジャダムナンでは今年8月6日の大会で新たな扉を開けた。1941年に開設して以来、一度も女子の試合を組んだことがなかったが、ついに改革に踏み切ったのだ。