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タイの女性ファンに超人気…“カズジュニア”三浦孝太が殺伐としたムエタイの世界を変える起爆剤に? 過去には痛ましい“射殺事件”も
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGetty Images
posted2022/09/04 17:00
三浦孝太は“ムエタイの聖地”ラジャダムナンで、元K-1 WORLD MAX王者のブアカーオとエキシビションで対戦。現地の女性ファンから大歓声を浴びた
四半世紀ほど前、ラジャダムナンと並ぶ権威を誇るルンピニー・スタジアムの入り口付近に、顔を大きく腫らし、血だらけになったタイ人の顔写真が貼られていたこともある。その正体はギャンブルでトラブルを起こした人たちで、見せしめのために顔を晒されていたのだ。
それゆえお世辞にも治安がいい場所とはいえず、かつて日本にはムエタイ観戦を控えることを薦める旅行会社もあった。確かにその日の大一番ともなれば、会場の盛り上がりようといったら無限大と形容したくなるほど凄まじい。人の欲望はここまで膨らむのかと何度思ったことか。日本では絶対に味わえないその空気を感じるためだけでも、ギャンブルムエタイの存在価値はあった。
「僕もキャーキャー言われながら試合をしたい…」
しかし三浦vs.ブアカーオが行われている会場にはギャンブラーの怒号も響かなければ、その姿を確認することもできなかった。それはそうだろう。ラジャダムナンとルンピニーは示し合わすかのように「ギャンブル禁止」という新たな方針を打ち出したのだ。
ムエタイ界の歴史的な大転換に対して、選手や関係者の反応は十人十色だ。8月21日に開催された『RISE WORLD SERIES OSAKA 2022』のメインイベントで、原口健飛と新設されたRISE世界スーパーライト級王座を争い、判定で初代王者となったペットパノムルン・キャットムーカオはこの一戦に衝撃を受けたという。
「ムエタイの会場で女性の声援が飛ぶことはあまりないことだと思います。選手として見るなら、応援してくれるなら誰でもいい。もし自分に孝太とのエキシのオファーがあったら? 顔では負けるけどテクニックでは絶対勝てるよ(笑)」
同じ大会で、地元・大阪在住の中野椋太を1RKOで葬った豪州きっての実力者チャド・コリンズも件の一戦を映像で目にし、今までのムエタイとは180度違う雰囲気を歓迎した。
「僕もタイで若い女の子たちの前でキャーキャー言われながら試合をやってみたい。僕はギャンブラーより一般のファンの前で試合がしたい。ギャンブラーは、ややもすると試合を悪い方向にコントロールするきらいがあるからね」