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野ボール横丁BACK NUMBER
山田陽翔(近江)も愛用している…大阪桐蔭・前田悠伍が“流行らせた”投手用グラブとは? 野球用品店「オーダーが殺到しています」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/09/03 11:01
大阪桐蔭の2年生左腕・前田悠伍。彼の使うグラブが『前田型』としてトレンドになっている
星 じつは、もう一つ、めっちゃ『見えるところ』で、僕らの界隈でちょっとしたトレンドが話題になっていたんです。業界では『前田型』と呼ばれているのですが、真っ平なウェブの投手用グラブです。店でも『前田型』に型付けをしてくださいというお客さんが急に増えました。
――ウェブというのは、親指と人差し指の間に張られたネットの部分というか、網の部分のことですよね。
星 はい。大阪桐蔭の2年生左腕、前田(悠伍)選手のグラブが、まさに真っ平なんですよ。それで、いつの頃からか『前田型』と呼ばれるようになっていったんです。近江の山田(陽翔)選手のグラブも真っ平ウェブでしたね。
――前田選手が元祖なのですか。
星 いや、もっと前からいました。僕は元祖は、高橋尚成投手(巨人、メッツ他)だと思っているんですけどね。担当者から聞いたところによると、球種がばれないようにしていたとのことでした。高橋尚成投手の最大の武器は、スクリューでした。独特な握り方で、わしづかみに近い。なので、スクリューの握りをしたときに、ウェブが柔らかいと網の部分が膨らんだりして、球種がバレるのが嫌だったんだと思います。前田投手もチェンジアップを武器にしていますからね。似たような理由があるのかもしれません。
用具メーカーには「大人の事情」が見え隠れしていたが…
――真っ平に型付けするのは、やはり難しいのですか。
星 いや、簡単です。紐の調整をすれば、ピーンと真っ平になりますから。紐が柔らかくなってくると、また緩んでくるので、高校生がよく『直してください』って店に持って来ますよ。あと、最近は、非常に個性的なグラブのメーカーが増えてきましたね。決勝で先発した仙台育英の左腕、斎藤蓉投手が使っていたグラブは『CHIAKI』というブランドで、左利き専用のグラブメーカーなんです。職人さんも左利きで、選手時代、なかなかフィットするグラブがなくて悩んでいたそうです。
――確かに確率的にグラブ職人も右利きの方が多いでしょうから、その方が左利きのグラブをはめながら作っても、細かなところで、行き届かないところがでてきそうな気がしますもんね。