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守護神・大勢につなぐ“8回の男”平内龍太がカギを握る? 巨人・原監督の我慢強い起用の裏にある“勝利の方程式”への道筋
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama/Naoya Sanuki
posted2022/08/29 11:02
セットアッパー平内龍太(左)→クローザー大勢(右)への”勝利の方程式”を確立できるか
低迷を続ける巨人の1つの象徴が、勝ちパターンの継投、いわゆる“勝利の方程式”を作り上げられないことにあるのは衆目の一致するところである。
9回を任せる大勢は期待通りの活躍を見せ、リーグを代表するクローザーの1人となった。
しかしその絶対守護神につなげるセットアッパーが固定できない。昨年までその重責を担っていた左腕・中川皓太投手が故障で開幕どころか、今季中の復帰の目処も立たない中で、原監督が代役に考えていたのがルビー・デラロサ投手とチアゴ・ビエイラ投手というクローザー経験のある2人の外国人投手だった。
外国人2投手の誤算
しかし、この2人が誤算だった。
開幕から全く機能しないままに揃ってニ軍落ち。そこで2人に代わって8回を任されることになったのが、昨オフの育成契約から這い上がってきた5年目の鍬原拓也投手だった。鍬原は開幕から約1カ月間はセットアッパーとして機能し、チームも4月28日のDeNA戦で20勝にリーグ一番乗りして好スタートを切ったわけである。
ところがその鍬原が翌29日の阪神戦で1点差を追う8回にマウンドに上がったが、そこで決定的な1失点とリリーフに失敗する。5月1日には再び1点を追う8回に今度は大量4失点。さらには5日の広島戦、6日のヤクルト戦と追いかける展開の8回にマウンドに上がるものの、いずれも失点を記録してしまう。その後はこの鍬原にデラロサやビエイラ、または左腕の今村信貴投手らが、入れ替わり立ち替わりに8回に登板したが、安定した結果を残せないでいた。
原監督がセットアッパーに求める条件
その中で原監督が新たなセットアッパーとして抜擢したのが平内だったのである。
「ボールに力があるか、ストライクをとれる変化球があることが、逃げ込みをはかる8、9回を任せる投手の条件」
これはかつて原監督が語っていた、セットアッパーとクローザーに求める条件だった。
そういう意味ではストッパーの大勢は申し分ない。デラロサ、ビエイラに鍬原とこれまでセットアッパーとして起用してきた投手たちにはボールに力がある。そして平内もまた、150キロを超えるストレートがあり、力で抑え込めるパワーピッチャーであることは間違いない。
ただ、1点差の勝ち試合を任せるのには、まだまだ安定感がないのも確かなのである。