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三笘薫加入ブライトンは“クラブ史に残る最盛期” オイルマネーで“金満化だけど着実な古豪”とは《プレミアBIG6以外の注目チーム》
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph bySports Graphic Number/AFLO
posted2022/08/13 11:02
プレミア初挑戦となる三笘薫。彼の所属するブライトンなどBIG6以外の陣容も興味深い
リーズ:ビエルサイズムを引き継ぐ熱血アメリカ人戦術家
2月下旬にマルセロ・ビエルサの後を引き継いだジェシー・マーシュ監督は、すでに多くの選手が負傷し、ベストから程遠い編成しか組めないなか、降格圏を脱してなんとか残留にこぎつけた。しかも敵地での最終節の後半アディショナルタイムに決勝点を奪う劇的な展開だった。現在48歳のアメリカ人指揮官は“サッカー不毛の国”からやってきた指導者と揶揄する向きもあったなか、伝説的な前監督の後任という難しい立場で、不可能とも思われた任務を全うした。
オフにラフィーニャ(バルセロナヘ)、カルビン・フィリップス(マンチェスター・シティへ)というチームのベストプレーヤーの二人が抜けた時は、一難去ってまた一難と感じたファンも多かっただろう。
だがこれまでに何度も苦境を乗り越え、偏見に打ち克ってきた指揮官──ニューヨーク、ザルツブルク、ライプツィヒのいずれのレッドブル系クラブでも最初は拒否反応を示された──と彼を信頼するフロントは、そのふたつの移籍で得た資金を賢く投資。ブレンデン・アーロンソンとタイラー・アダムスの同胞の教え子をはじめ、ラスムス・クリステンセン(こちらもザルツブルク時代の愛弟子)、ルイス・シニステラ、マルク・ロカら伸び盛りの好タレントを迎え、質はもちろん、昨季に痛感した薄い選手層を改善した。
ホームで迎えたウォルバーハンプトン・ワンダラーズとの開幕戦では、先制されながらもホームの熱いサポーターの後押しを力に変え、2-1と逆転勝利を収めている。昨季は4勝しかできなかった本拠地エランド・ロードで、幸先の良いスタートを切った。
「もちろん開幕戦だから興奮していたのも確かだが」と試合後にマーシュ監督は話した。
「トンネルを抜けて30秒で、やってやろうという気になった。最高のスタジアムだ」
ベッカムに蹴りを入れたことのある武勇伝も
この一戦では、ピッチサイドで敵将ブルーノ・ラージと口論しているシーンもあった。現役時代には、メジャーリーグサッカーの試合でデイビッド・ベッカムの腹部に蹴りを入れ、直後に鼻を擦り合わせて睨み合ったこともある指揮官だ。この熱情はリーズの伝統、そしてファンと共鳴するものでもある。
一方で選手との対話を重視し、ライプツィヒ時代に補佐したラルフ・ラングニック直伝のプレッシングフットボールを、丁寧に植え付けようとしていると伝わってくる。初のフルシーズンに臨む今季、ポスト・ビエルサのリーズにも熱狂と一体感は維持されそうだ。