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告白して玉砕すること6回、14年の恋物語の結末は?「僕がヒダカになる」還暦ボートレーサー日高逸子を支える“理想のパートナー”
text by
田中耕Koh Tanaka
photograph byItsuko Hidaka
posted2022/08/12 11:03
14年の歳月を経て結実した日高逸子と夫・邦博の恋物語。パートナーの献身的なサポートが、ボートレーサーとしての活躍の原動力になっている
家族のために直向きに生きる邦博がもし専業主夫でなかったら、トップレーサーとして走り続ける自分はいなかったと日高は思う。
「家のことを心配せずレースに集中できる。家庭では母、レースが始まると勝負師。そのオンとオフがはっきりしていることがプラスになっているんです」
1カ月のうち、およそ25日間はレースがあり、全国24カ所の競艇場を飛び回る。その間は邦博に家事を任せるが、家に帰ると、日高が取り仕切っていた。
「家にいる時間が少ない分、やれる時はちゃんと家事をしたかった」
料理には自信があった。食事や子どもの弁当は全て手料理。冷凍食品は一切使わなかった。
朝は4時半から5時には起きる。ファンからの手紙に目を通し、返事を書く。それから朝食の準備だ。レース開催中、邦博は朝5時半に起きているが、日高がいる時は7時近くでいい。日高が申し出た夫婦のルールだった。
「この世界が好きなんだと、つくづくそう思うんです」
結婚して26年が過ぎた。日高はA1級に復活しトップレーサーとして走り、2人の娘は大学を卒業し、関東と関西で一人暮らしをしている。
「夫はこの上ない理想のパートナー。彼が払った犠牲を無駄にしたくない。それだけは嫌。娘たちも応援してくれている。家族にはレースで恩返ししたい」
トレーニングも年齢に合ったメニューを取り入れている。ホットヨガやジムに加えて、集中力、記憶力、動体視力を鍛える脳のトレーニングを始めた。
「私はこの世界が好きなんだと、つくづくそう思うんです。24会場を転々とし、戦う相手もその時々で違う。いつも新鮮でまったく飽きない。しかも、まだ負けたら悔しい思いがある。この思いがある限り、全力でこの世界で生きていきたい」
鵜飼菜穂子が持つ61歳の女子最年長記録更新は、もう目の前に来ている。
不遇の少女時代を過ごし、職を転々とする中でボートレースに出会い、夫とともに2人の子を育てながら厳しい勝負の世界を生き抜いてきた。
「努力は嘘をつかない。そして、人は誰でも逆転できる」
自ら信じるその言葉を胸に、水上のグレートマザーはこれからも新たな伝説を築いていく。
<#1、#2から続く>
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