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ボルト今なにしてる? サッカー選手もすでに引退…「ファーストタッチがトランポリンみたい」と辛辣批判も、本人は「選択を間違ってしまったんだ」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2022/07/17 17:01
2022年6月、ロンドンで行われたユニセフのチャリティーマッチに出場したボルト
試合中、ボルトは「トランポリンのような」タッチを何度か見せた。
序盤には元マンチェスター・ユナイテッドのパトリス・エブラから良質なアーリークロスが届いたものの、左足でミートできず、シュートは枠を大きく外れていった。
その10分後には、再びエブラが左サイドを突破し、中央に走り込んだボルトはボックス内で止まってフリーになると、グラウンダーの折り返しを左足でフィニッシュ。鋭いシュートは枠に飛んだが、元イングランド代表GKデイビッド・ジェームスにセーブされた。
見せ場はこのシーンくらいで、以降は疲れからか、ポジションを下げていったが、運動量が少ないので、守備者としてはほとんど機能していなかった。
「欧州に留まればよかったね」と後悔も…
それでもいつもポジティブな五輪史上最大のアイコンのひとりは、ちょっとしたボタンの掛け違いさえなければ、あるいは異なる結果になっていたかもしれないと、最近のインタビューで話している。
「選択を間違ってしまったんだ」とユニセフのユニホームを着たボルトは口にした。
「陸上競技から引退した時、メディアから逃れるために欧州を離れたかった。そしてオーストラリアに行ったのだが、そこのフットボールのレベルは高くなかった。欧州に留まればよかったね」
むろん、この発言はオーストラリアのメディアや識者からの反論を受けている。なかには「マリナーズ時代の彼のトレーニングを取材していたが、ゴミだった」(FOXスポーツオーストラリアのジェームス・ドッド記者)とまで厳しく否定する向きもある。
This is laughable from Usain Bolt.
— James Dodd (@JamesDoddFOX) July 4, 2022
I was there reporting and watching his training sessions at the Mariners. He was garbage.
He’s a Sunday league footballer at very best…and not a good one either. pic.twitter.com/04Xc2UAAgF
抜群の運動能力を持つアスリートにしてみれば、複数の競技をこなすのは造作ないことに感じるのかもしれない。1950年代にはサッカーとアイスホッケーの選手として夏と冬の五輪に出場し、後者で金メダルを獲得したフセボロド・ボブロフ(ソ連)というスーパーアスリートがいた。また史上最高のバスケットボールプレーヤー、マイケル・ジョーダンも一度目の引退の後に、亡き父の夢を追って野球のマイナーリーグに挑戦している。
だが、陸上競技とバスケットボールのスーパーレジェンドも、別のスポーツでは大成できなかった。「トランポリン」や「ゴミ」という表現は辛辣すぎたとしても、モダンフットボールのトップレベルにボルトの居場所はなかった。もっとも、彼がチャリティーマッチで惜しいシュートを放ったりすると、「悩めるユナイテッドの前線を助けて!」といった反応がいまだに起きたりするけれども。
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