大学入学以降は、周囲とのレベルの差に戸惑うことも少なくなかった。

　勉強では専門性が増し、より深く実践的な知識を求められた。サッカーでは全国トップレベルの才能が凌ぎを削る環境で、スタートは一番下のカテゴリーである6軍だった。

　ただ、前述の通り、川勝は「どちらか1つに絞って打ち込むタイプ」ではない。中学・高校で培ってきた「効率よく、全力で取り組む」姿勢が大学生活でも存分に生かされた。

「高校と違って覚えるだけでは通用しないので、具体的な患者の症状や治療過程、精神的な変化をエピソードにして覚えることで、知見に変えていくようにした」

「夜更かしをしない。寝過ぎない。食事も適時に適量をバランスよく摂ることを意識しています。夏場は図書館で勉強をしているとクーラーのせいでコンディションが悪くなるので、食堂のテラスを使うなど細かい意識をするになった」

食堂のテラスはよく勉強に使っている　©Takahito Ando

　医学群のカリキュラムはテストの連続で、平日は8時40分から始まる1限から5限まで全て医学の授業で埋まる。休み時間はテラスや図書館などで勉強に時間を割いた。授業が終われば今度はサッカーに全集中。もちろん、練習後のケアも欠かさなかった。

　すると、成果はすぐに現れた。

小井土監督「一段一段、登ってきた」

　1年終了時には2軍まで駆け上がり、3年の新チーム立ち上げ時についに1軍昇格を伝えられた。小井土監督はそんな川勝の努力する姿に目を細める。

©Takahito Ando

「劇的に変わったとか、成長したというよりもまさに一段一段、登ってきた印象。想像以上に忙しい毎日を送っていると思うのですが、そういう雰囲気を微塵も外に出さないんです。サッカーも勉強も一切手を抜かない姿勢を含めて、周りはみんな翔太を信頼している。『なんであいつが1軍にいるの』という空気は一切ないし、高い志を持っている彼の存在がチームにプラスに働いているんです」

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