Number ExBACK NUMBER
「子供が好きすぎて子離れできない」W杯ベルギー戦“つま先ゴール”から20年、鈴木隆行46歳は今…ぶっきらぼうなFWは2児のパパになっていた
text by
高川武将Takeyuki Takagawa
photograph byKisei Kobayashi
posted2022/07/02 17:04
都内のサッカーバーで深夜23時から取材に応じた鈴木隆行
「まず並ぶこと」
――ポジションに?
「ちゃうちゃう(笑)。普通に並んで走るところまで。言ったことをちゃんとできるように仕込んでいる最中です。最近はだいぶできるようになって、シュート打ったり、ドリブルしたり。普通はボールを蹴れるようになるまで、2、3カ月かかるんですよ。今年は早かったんです。年代によって、進歩の速度が違うんです」
ADVERTISEMENT
幼稚園での指導を語る鈴木は、いかにも楽しそうだ。近年は、集団行動が上手くできない子供も増えているが、鈴木は全く意に介していない。
「保護者の方と一緒に育てる気持ちで取り組んでいますよ」
「園児と接するように、プロを目指す選手にも接する」
さらに、こう言って笑うのだ。
「幼稚園とスクールで毎日4、5時間も、あれだけの熱量で指導していたらホント、疲れますよ。だけど俺、不思議なことに、一日経つとリセットされちゃうんです。練習が終わって疲れて、明日もかぁ、嫌だなぁってなるんですけど、翌日はまたフレッシュな気分で同じテンションでできる。おかしいでしょ? こんなにやってるのに。でも、それが自分の特徴。だから、現役時代の苦境にも耐えられたのかなぁ」
指導者受難の時代と言われて久しい。
今の若い人には厳しいことを言えない、親にも叱られたことがないから、叱られるとふて腐れて何もやらなくなるか、果てしなく落ち込んで鬱になる――。あらゆる競技で、そんな指導者の嘆きを聞くようになってから、かなりの時間が経過した。今はそれがプロの世界にも蔓延している。あるプロチームの指導者から「5年後くらいにはコーチに怒られたからやめるという選手が出てきますよ」と聞いたのは3年前のことだった。
そんな状況を突破するキーワードは「愛」だと鈴木は言う。