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「子供が好きすぎて子離れできない」W杯ベルギー戦“つま先ゴール”から20年、鈴木隆行46歳は今…ぶっきらぼうなFWは2児のパパになっていた
text by
高川武将Takeyuki Takagawa
photograph byKisei Kobayashi
posted2022/07/02 17:04
都内のサッカーバーで深夜23時から取材に応じた鈴木隆行
「これ、ヤバいでしょ(笑)。私服ですからね。こんなサッカー選手、いないよ」
――若い頃はトンガってましたよね。自覚、あるでしょう?
「ありますね」
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――最初の取材のとき、ふて腐れていたから。簡単な取材にしてもらえますかって。
「アッハハハハ。ヤバいですよ(笑)」
――4年後の、このセルビアのときは、まだ表情にもギラギラ感がある。
「まだね。まだギリギリ、トップを目指してもいたから。ただ、苦しくて……」
――発言もポジティブとネガティブのギャップが凄かった。「ある人に、俺は逆境が好きなんだと言ったとき、逆境じゃなくても自分を追い込めるのが本当の強さじゃないかと言われて、全否定された気分になった」とか、「自分は逆境じゃないと頑張れないから、無意識に追い込んでいただけだ。究極の弱さに突き当たった」とか。
「そんなこと話してました? うんうん、なるほどね。本当に疲れてたからね。でも、懐かしいなぁ……」
幼稚園での指導は8年目
ひとしきり笑いあった後、彼はそう言って、しげしげと記事を見つめた。当時、明らかに疲れ切っていた鈴木が、その後9年間も現役を続けるとは思いもよらなかった。その理由については本誌に譲るが、若き頃、あれほどトンガっていた男は09年に結婚し長女をもうけてからは「子供が好きすぎていまだに子離れできない」と言うほどの「イクメン」に変貌していたわけだ。
「スクールの子供たちにも、自分の子供と同じように接していますよ」
サッカースクールは小学生が対象だが、実は彼は、現役最後の15年から幼稚園での指導も続けていて、8年目に入った。
「園児と触れ合うと、気持ちが穏やかになるし、自分が癒されるんです」
――園児にどうやって教えるの?
「教えられるんですよ。園児にもわかりやすい言葉で統率するんです」
――赤ちゃん用語を使うってこと?
「それはダメ、よくないと思うんで。やっぱり、厳しい中でも園児が理解できるような言葉……一列に並びなさいと言ってもわからないから、こうやってとジェスチャーを入れながら、これが並ぶってことだよって。言葉を選びながらやっています」
「年代によって、進歩の速度が違うんです」
――凄いな。
「今日もスクールの前にやってきましたよ。4月から入った年少さんたちを」
――サッカーはどんなことを教えるの?