優勝会見でも、試合中に笑顔を絶やさなかった理由を聞かれたインジは力強くこう答えている。

「しんどい時もありますよ。特にゴルフの流れが良くない時は、笑顔でいることはしんどいですね。でも最後まで諦めずに、優勝できた自分を誇りに思います」

　18番の第3打は尾根ごえのロングパットとなったが、ピン側まで寄せた。最後は1m強のウイニングパットを沈め、歓喜の涙が溢れた。これまでとは違う「メジャー制覇」だった。

「私がスランプの時でも、変わらず私のことを信じて支えてくれたスポンサー、家族、コーチ、友達、キャディ……支えてくれたみんなに感謝します」

これからも病を向き合いながらゴルフを続ける

　以前、インジはこんなことを話していたことがある。

「私の目標は、周りの人たちに良い影響を与えられるような人になること。強いゴルファーになることじゃないです。でも良い人になれたらいいなと、日々努力した結果、うつ病を悪化させてしまったんですけどね」

　インジは真面目でとても心優しい選手だ。いつも周囲を気遣い、期待に一心に応えようとする。応えようとしすぎるのかもしれない。

　実は同大会の前には、症状が落ち着かず、「アメリカでのゴールが分からない」と姉の前で涙を流したという。ただ「もうゴルフ辞めたら？」と言われて、自分に「まだゴルフをやりたい」という意欲があることに気がついた。

　何度も何度も挫けそうになりながらも、前を向き、周囲と自分を信じて優勝カップを手にしたチョン・インジ。これからも病と向き合いながらゴルフを続けていく彼女を見守っていきたい。

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