「あれは絶対ダメ。シリーズのあの場面ではありえない。僕だったら間違いなく、外に放っているでしょうね。それでライトに放り込まれたらしゃあない。あの場面、何をやってはいけないかといえば、ホームランしかない。つまり引っ張られないボールを選択しないといけない」

「小さな大魔神」と呼ばれる後継者が自らの決め球ツーシームを、相手の4番内川聖一の内角へ投げ込み、左翼スタンドに同点弾を運ばれた。その場面を振り返りながら、元祖は怒っていた。もどかしそうな表情に、このチームへの思いが溢れ出ていた。

「これで山崎がどう変わるか。彼にもチームにも一番痛いホームラン。これを今後の野球人生でどう考えていくか。山崎も、僕のところにチラッと聞きにきたことありますよ。もっと聞きにくればいいのになあ。いくらでも教えてあげるし、うまく僕を使えばいいのになあ……」

2017年撮影　©︎Sugiyama Takuya

　やはり鬼神を動かすものは港町球団への情であるらしい。最終回のマウンドに立っていた頃の神経をすり減らす日々を思えば、「もう野球はやらない」と言いたくなるのもわかる気がする。それでも、おそらく……、いや、ほとんど間違いなく、この人は生まれ変わっても大魔神だろう。

　それも冠に「ハマの」とつく。

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