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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
《ドラフト中間報告》これがピッチャー“ドラ1候補”ベスト10 4位は“鬼の東都”9勝0敗、3位は沖縄の「ひと目惚れ」右投手…では1位は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/06/17 17:04
ドラフト中間報告【投手編】3位 仲地礼亜(沖縄大〔嘉手納高〕・178cm80kg・右投右打)
【投手編】3位 仲地礼亜(沖縄大〔嘉手納高〕・178cm80kg・右投右打)
昨年の6月、大学選手権での快投が忘れられない。名城大を8回1失点……試合は0対1で惜敗したが、その内容が素晴らしかった。立ち上がりから145キロ前後の快速球を内外、高低にも投げ分け、カットボールとタテのスライダーに、落差の大きなカーブは落下スピードが一級品の空振り三振を奪える変化だ。それでも決して力任せにならず、リリースからフィニッシュにかけて一気に瞬発できるスタイル。
身長のわりに腕が長く見えて、しなやかな腕の振りから思いきりよく振り下ろすのに、高く抜けるボールがほとんどない。中盤4イニングのコントロール率(構えたミットにきまる確率)は67%。これはプロの一軍投手に匹敵する精度だ。走者が出ると、セットポジションの時間にバリエーションをつけて考えながら投げているし、ピンチにも顔色を変えない。
誉め言葉の連続になったが、ほとんど「ひと目惚れ」だった。
投手には「一世一代のピッチング」というやつがある。投手生活で一度、ドカンと完璧な投球をして、以降サッパリ。そこに出会ってしまうと間違えることがあるが、今季も、大学選手権の予選になる試合で、150キロ近い速球でピンチをしのぎ、仲地投手らしいイキのいい熱投を見せたと聞く。
明治大当時の森下暢仁(現・広島)のようにも見えるし、やはり明治大出身の柳裕也(現・中日)のようにも見える。大学4年生で、これだけ完成度、伸びしろの両面を感じる投手もなかなかいない。
【投手編】2位 金村尚真(富士大〔岡山学芸館高〕・176cm82kg・右投右打)
「大きな欠点を持たない投手」……プロで働ける投手の絶対共通項として、私がこれまでの取材経験から割り出した要素だ。逆の表現をすれば、「必要条件が高いレベルで揃っている投手」。今年のドラフト候補の中でこの条件に合致するのは、大阪ガス・河野佳、京都国際高・森下瑠大、それにこの投手……そんなところだろうか。
強敵相手とみると、カーブ、スライダーの「遅い系」で慎重にカウントを作り、一転140キロ後半の速球で詰まらせて打ち取る。タイミングを支配した投球は、多彩な変化球のすべてを制御できる技術があればこそ。スライダーはタテ・横の2種、カット系にチェンジアップ、スプリット。
遅い系を見せて速球で詰まらす、外を見せて内で詰まらす。守備、けん制も心配なく、ピンチでも失点しても、全く動揺を見せずに丁寧に、丁寧に、根気よく、ポーカーフェイスで投げ進める。
先発・完投ばかり見ているが、こういう投手を「後ろの1イニング」で使ったら、高度な緩急、精度を保ったまま150キロ台連発もあるのでは……「ソフトバンク・攝津正の成功」がふっと思い浮かんだ。