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12球団スカウトが注目するドラ1候補・金村尚真(富士大)のリアルな評価…選手権1回戦負けも「この感じ、誰かに似てるな」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2022/06/13 17:01
全日本大学野球選手権・大阪商業大戦に登板した富士大・金村尚真投手(4年)。ドラフト1位候補として堂々のピッチングを披露した
「この感じ、誰かに似てるなあ……」と思い起こせば、2012年秋の明治神宮大会での則本昂大(楽天、当時・三重中京大)だ。エースとしてフル回転してきたが、法政大に0対1と敗れ終戦(則本自身は5番手で登板し無失点)。それでも試合後の姿はチームを背負ってきたエースの誇りを失わずに凛としていた。
投球内容や佇まいには、スカウトからも高い評価の声が聞こえた。
「どの球種でもストライクが取れる先発型。いろんな配球パターンが組める投手ですね」(ソフトバンク・永井智浩編成育成本部長兼スカウト部長)
「ゲームを支配する能力が高いですね。冷静でやるべきことをしっかりやっているという印象でした」(日本ハム大渕隆GM補佐兼スカウト部長)
上記2名だけでなく複数のスカウトを取材したが「ドラフト上位候補ではないか」との声が上がった。
チームだけでなく自身の命運を大きく左右する一戦で力を発揮できるのは、常に高みを目指してきたことの成果だろう。
沖縄県生まれ、高校は岡山学芸館へ
中学時代から素材の良さは際立っていた。沖縄県で生まれ育ち、地元の豊見城中を全日本少年軟式野球大会優勝に導いた。侍ジャパンU-15代表にも選出されアジア選手権に出場。「それまでは沖縄の中しか知りませんでしたが、いろんな地域の選手と野球をして、自分より凄い選手がたくさんいるんだと知ることができました」と振り返る。
高校はさらなる成長を求めて沖縄に留まらず本州の岡山学芸館に野球留学。最後の夏は、県大会決勝で当時2年生の西純矢(阪神)擁する創志学園に敗れて甲子園出場は果たせなかったが「親元を離れて1人になったことで、野球に対する取り組みや考え方は変わったと思います」と甘えが許されない環境で地道に力をつけた。
そして、大学は山川穂高、外崎修汰(ともに西武)、小野泰己(阪神)、多和田真三郎(元西武)らを輩出するなど選手育成に定評のある岩手の富士大に進んだ。